好きな人に彼女が出来た件について。[ 終 ]

殴ったら拳が痛かった。 ページ15

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喧嘩とか、したことない。




だから、九井くんたちは、
なんでしてるの、って思うけど、


男の戦いとか言ってた。





だけど、私にも譲れないものがあったんだ。


たまたま聞いた話で、
きっと本当に女の裏の顔ってやつ。



『絢音さぁ、乾くんとはどうなの？』


絢音｢全然手ぇ出してくんないの、飽きちゃった。
灰谷兄弟かっこよかったから、乗り換えようかな。｣




『そういや、九井くんの彼女、名前なんだっけ？』


『今井のこと？』




絢音｢あの子顔広いみたいでさぁ、
灰谷兄弟とも知り合いで、この前大寿くんといたの。
あいつ、びっちじゃね？


ばかだから、しっぽ振ってることに気づかないよ。




ていうか、青宗くんのこと、あんま好きじゃないし、
今井が好きだからって理由で、取ったし。｣






乾くんの彼女さんだから、信じたかった。



いい子で優しい子で、
だから、惚れたんだろうなって。







でも、そーゆーわけじゃなかったみたい。


それに、ふつふつと湧き上がる感情の名前が、
わからなくて。




『九井くん金持ってる感じするし、
私九井くんとろうかな。』


『あの二人付き合ってるって言った割に、
カップルらしいとこないしね。』




『それー、』







校舎裏でのたむろ、それを見て、
気づいたら、



彼女たちを殴ってたし、馬乗りになって、

ギチギチと首に手をかけていた。





あ、やばい、これ。
ダメなやつ、って思えば、



声が聞こえてきて。






九井｢やめろ馬鹿！！｣


九井くんに止められて、
その後ろには乾くんがいて、目を見開いてた。




ぽろぽろと流れる涙の意味がわからない。

でもきっと。






｢いたい、いたいよ九井くん。｣


九井｢いたいな、お前の綺麗な手を、
そんなことに使うなよ、ばか。｣






｢いたいの違う、ずっと痛い。





悔しい、悔しくてたまらないっ、
私の方が好きなのに、私の方が愛強いのに、
なんでっ、なんで？なんでかな、





私、心が痛くて、たまらない。
こいつ殴っても、痛いまんま。｣



腫れて、赤くなってた拳を見つめたのなら、
九井くんに抱きしめられて、



頭を撫でられた。







あぁ、昔からそうだ。


泣くたんびに、こうしてくれて、
それで、慰めてくれて。






それが、



それがさ、







乾くんなら良かったのに、って、
何万回も思ってしまうんだ。




サイテーだって知ってる。






でも、思うだけはいいじゃんか。

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