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「生きたいって、思っちゃったな。」 ページ29

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風楽「やだなぁ、」

「なにが。」

風楽「…………マフィアだからさぁ。死ぬことなんて怖くない、て思ってた。人が死んでも、なんとも思わないようにしてきた。」

「うん?」

風楽「だから、命と死を軽く扱ってきた。いつか死ぬんだもん、人間は。だから、僕もいつかは死ぬし、多分人より早く死ぬんだろうなぁ、て思ってきた。」

「そ、」

風楽「けどさ、」

「なに。」

風楽「生きたいって、思っちゃったな。死ぬのが、怖くなっちゃった。」





朝ごはんを食べ終えて、そのあとに少しの休憩のようにと、紅茶を飲む。目の前で、私を愛おしそうに見つめてくる奏斗くん。場所が違うだけで、それは私がいつも見ているシーンと、何ら変わらなかった。だから、むず痒さを覚えている。いくらかいたって、どうにもならない様な痒さが、ずっと胸の内を焦がしていた。微睡みそうになるような午前中、講義は午後からだから気にすることは無かった。目の前で、困ったようにと笑いながら、でも人間らしいようなことを言う君。ゆらり、黄色が揺れて夜空が沈んでいくのを私は見つめる。かちゃ、と音を立ててティーカップをソーサラーに置いた。多分、本音なんだと思う。隠すような声色でもなく、柄じゃないと言いたげな声のトーンで、どこか震えている声で。




なんて言えばいいのか、私は分からずにいる。多分私は、そんな漫画やドラマみたいな台詞を零すことは出来ない。だって、私はあなたにとってどんな存在か分からないから。連れ出して欲しいのか、それとも安いような気休めの言葉を投げて欲しいのかも、分かってあげられない。住む世界が違うんだと、線引いたのは紛れもない私であり、渡会さんなのだから。けど、別にいいんじゃないの、って言おうとした。甘いような紅茶に、少し噎せてしまう。なんて言おう、なんて伝えたのなら彼は安心して笑うだろうか、てことを考える。多分きっと、こんなの違うって思うけど、それでも私だって思ってしまうんだ。





「私は、…………わたしはさ、」

風楽「うん。」

「奏斗くんには、生きてて欲しいな、って思うよ。」

風楽「…………………うん。うん、」

「だから、生きたいってすれはいーんじゃないの、そーしたいならさ。」

風楽「僕が生きているその時は、Aちゃんは隣に居てくれる?」

「マフィアは、ノーセンキュー。」

風楽「そーだよね。」





子供のように、無邪気に君が笑うから、私はそれに少し安心したの。

私の事、好きなの?→←君がいる朝とやら。



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そらの(プロフ) - すごく好きな作品です!更新頑張ってください! (2月12日 1時) (レス) @page28 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除ありがとうございます!ずっと待ってました!!! (2月8日 0時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - この作品めっちゃ好きです…kntくん供給少ないので助かりました…これからもずっと応援してます…!! (11月11日 23時) (レス) @page10 id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ことり | 作成日時:2023年11月11日 21時

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