もし恨むことがあるのなら。 ページ1
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もし恨むことがあるのなら、自分の優しさやお節介さを恨むべきなのだろう。
そんなことを考えながら、影を指すような路地裏で、ゴミ箱の裏に隠れている人物。ぴょこぴょこと除くような毛を見つめながら、何度も通り過ぎようとした。けど、気になってしまって、目線を逸らして。でも結局戻しての繰り返しをする。ゴミ箱から覗くような手足にも怪我と思わしきものがあって、破けたあとがある。それを見る度に、並々ならない事情があるんだろうなと思うと同時に、踏み込んではいけない世界だと思った。1歩踏み出して、さっさと通り過ぎて、見て見ぬふりをすればいいのだろう。
現に、私以外の人達は皆通り過ぎている。それが普通でそれが当たり前なのだ。だけど、昔からそれが出来なかった。見て見ぬふりをして、知らないフリをして、何も関係ない第三者という立ち位置が正解だと世の中は言う。その通りだ、私もそう思う。けど、それが出来るほど私はオトナなんかにはなれやしない。困っていたのなら助けるし、泣いているのなら手を伸ばしたくなる。周りからよく言われる言葉の羅列には、もう飽き飽きだと叫びたかったほど。『Aは優しいね、』という言葉と、『お節介焼きすぎ。』という言葉の2つ。似ているようで反するような言葉の羅列を思い出しながら、私は一歩を踏み込む。
路地裏に座り込む男の目の前に立っていた。
何でこうしたかはわからない。
けどでも、放っておけなくて。
何でこうなってるのかなんて分からない。
知りたいとさえ思わない。
それでも、今ここで知らないフリをして通り過ぎたのなら、後悔する気がした。あの時助けてあげればよかった、って。あの時、手当してあげれば良かったって。それが、嫌いなんだ。後悔とか、タラレバとか多分ずっと昔から嫌いで。後悔するぐらいなら相手が嫌だと言おうにも、無理矢理にでも絡んで、関わって、手を伸ばせばいいって思って。
ねぇだから、怪我してるそこの君。私の後悔にならないために、手当させて、そのあと病院に行きなね。
ゆらり、スローモーションのようにと視線がこちらへ向く。ほんの少しの敵意、警戒心を感じ取りながらも、彼は柔らかな笑みを浮かべていた。まるで、こんなのなんともないですよ、と語るようにと。その日、私はきっと境界線を飛び越えた。本来隔たれているはずの壁の向こう側に、触れてしまったのは私だったらしい。
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そらの(プロフ) - すごく好きな作品です!更新頑張ってください! (2月12日 1時) (レス) @page28 id: 17ad6f88d5 (このIDを非表示/違反報告)
miyaana(プロフ) - パスワード解除ありがとうございます!ずっと待ってました!!! (2月8日 0時) (レス) id: dd83a370ce (このIDを非表示/違反報告)
さくらなぎ。(プロフ) - この作品めっちゃ好きです…kntくん供給少ないので助かりました…これからもずっと応援してます…!! (11月11日 23時) (レス) @page10 id: 2b648593bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことり | 作成日時:2023年11月11日 21時