笑えないジョーダン言わないでよ。 ページ7
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心臓が止まったんじゃないか、って錯覚するぐらいに、理解するのをやめようとしていた。横断歩道の信号はもう既に青色になっていた。待っていた人達は足を動かして、向こう岸に渡る。それなのに、私とイブはそこに立ち止まっているだけ。目を合わせても、きっと何も分からないようにと。いや、分かろうとしてないんだけども、そんなことを言おうとして、やっぱり辞めて。何か言わないと、と思いつつも、多分何も言えなくなる。はくはく、と口を開けても、喉から声が出なかった。まるで、言葉が詰まってしまったかのようにと、音が出なかった。やっと絞り出した声は、なんて言葉だったっけ。
「それ、なんてジョーダン。」
イブラヒム「ジョーダン、ね。」
「笑えないジョーダン言わないでよ。」
イブラヒム「…………そー、ね。」
「イブ。」
イブラヒム「あー、ごめんって。うそ、からかっただけ。そんな顔すんなって。ほら、早く行こう、青信号終わりそうだしさ。」
「そーゆージョーダン、私好きじゃない。」
イブラヒム「わかったって、ほら。学校、な?」
多分私は、むくれたような、拗ねた子供のような顔をしていたに違いない。自分でもわかるほどだから。少しだけ小さく眉を寄せた後に、けらっと笑ってみせるイブ。それに、なんでか安心してしまった私がいた。良かった、いつも通りのイブだ、て。胸をなでおろしながら、見つめていれば、ごめんって謝られた。子供をあやす様にとした柔らかな声で、優しい言い方で、納得させようとしてくる。それを感じつつ、ほらって顎でくいっ、と促されるから、私は納得したようにと、物わかりのいい女を少し演じてあげるの。仕方ないなぁ、てするようにと、追いかける。
ちかちか、とした青信号を急いで渡って向こう岸へと辿り着く。そうそう、イブは私をそんな目で見ることなんて、ないって私はわかっているから。私たちは、男女の友情は成立する、てことを証明していくべきなんだもの。間接キスと言われるような飲みかけのジュースも、食べかけのお菓子も、手が重なったってドキドキなんかしない。普通に美味しい!みたいな感想を零すことしかしない。だってそれは、お互いを意識していない、て証拠にもなり得るでしょう?意識してたら照れたりとかするはずだもの。そのまま、道を辿るようにと歩いて学校へと行く。
その色が何色かなんて、私は分からないと誤魔化しておいた。
誤魔化すべきじゃなかったよなぁ。→←「俺はその気あるって言ったら、お前はどうすんの。」
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作者名:ことり | 作成日時:2024年2月8日 22時