兄が冷たいので外交官になりました

回想5 ページ6

『では、なぜ笑われたのですか』

ちょっとむっとして尋ねる。

「いや…健気だと思って」

笑みが薄れたその表情から、多くを読み取ることは難しかったけれど、良い意味ではない気がする。

「……A。そんなに気を張らなくて良い」

『…？』

「お前は今のままで十分に愛されている。あまり煮を詰めすぎると、不幸になる」

それはお前の愛する父と兄の為でもない。

「剣になるなどというのは諦めて…」

『嫌です！！』

「……」

静かにこちらを見返す霊凰将軍。

『今のままじゃ嫌です。私は今の私のままが嫌だから変わりたいのです。やる前からそんなこと言ったって、わからないではありませんか！強くなって見せます！女だからって…そんなの…！』

「……」

暫く押し黙られ、溜息を吐かれる。

呆れられたようだ。

「自分の事を大切にすると良い」

そう言って、去って行った。

そんなこと言って、そこまで登り詰めた将軍の方が、自分のことを大切にできていないところがあるのではないか？などと思う。苦労があるはずだ。厳しいはずだ。

誰に案ぜられたって、私は、努力する。


『……何のために？』


頭によぎるのは、お兄様のあの顔、声。


『いいえ、自分のために』


それがお兄様やお父様のためになればそれで良い。

でも、私は自分のために、変わりたいんだ。
さっき話していてわかった。

呉家に恥じぬ自分になるのは、結果論だ。

私は自分に恥じぬ自分になる。

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