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「ん、綺麗に付きました」


嬉しそうに微笑む彼の顔が目と鼻の先にあっても、最早恐怖しか感じなかった。


掴まれている手は氷のように冷たいのに、彼の腕の中は程よく温かい。

心地良くて離れがたく思った自分にも少し怖くなった。



「怯えた顔も大変可愛らしい。ずっと傍に置いておきたいくらいです」


そう云った彼の冷やかな手が頬に触れた。

半ば強引に顔を上げられた瞬間。___ふに、と柔らかいものが唇に触れる。



「んぅッ…!?ッふ、、」


「ん、、、」


視界いっぱいに映る紫水晶の瞳。

私の髪と、彼の柔らかい黒髪が、この距離を思い知らせるように緩く絡み合う。



「ん、ふぁッ、、ッぅぐッ……!?」


彼が不敵な笑みを浮かべたと同時に、口の中にぬるりとしたものが入って来た。



もう、無理だ…!

私は自身の舌に絡み付くそれに、思い切り噛みついた。



「ッ…!!」


「ッあ、はぁッ…!はぁ、、」


驚いた彼が力を抜いた瞬間を見逃さず、力いっぱい突き飛ばして距離を取る。

口内に広がる鉄の味に気分が悪くなりながら、唇の端を拭った。

そして懐に隠していた武器に今度こそ手をかける。



「何が、したいんですか。本当に」


「僕はAさんの【全て】が欲しいだけですよ」


「ッ!……今の貴方とは話にならないッ」



そう吐き捨てて、私は眠らない活気ある表通りへと駆け出した。

兎に角彼から逃げる事しか考えられなかった。







「んふふッ、かくれんぼですか。あぁ、こういうのは隠れ鬼というんでしたっけ」


駆ける彼女の後ろ姿を見ながら、彼はぽつりと呟く。



「面白い、徹底的に潰して差し上げましょう」


煌々と輝く月を背に佇む彼の口端には、血が流れていた。その血を舐めとり、可笑しそうに嗤う。


「彼女の絶望した顔も、泣き顔も。今から愉しみですね」



此処からは、彼と彼女の情報戦争。

居場所を突き止めたという報告と、突き止められたという情報が彼らの情報網で飛び交う。


いくら数多の情報に精通している情報屋でも、組織相手には限界がくるだろう。


『鼠は何処にでもいる』という言葉を彼女が思い知るまで。あと__。








・考察


>>>基本は紳士。でも余所見をした瞬間、容赦はありません。

欲しいと思ったものはどんな手を使ってでも手に入れます。洗脳だってお手のモノ。
目を付けられたら最後。何処へ逃げたって、絶対に目の前に現れますよ。


____「迎えに来ました」と満面の笑みで。







Fin.



みかん様、リクエストありがとうございましたm(_ _"m)



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雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時

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