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幸せでいる為に【条野採菊】 ページ37





·『幸せ恐怖症』の番外編ver.
·詳細設定は本編をご覧下さい。





《熱帯夜の夢》






「________ッ!?」



急激に浮上する意識に合わせて、思わず私は飛び起きる。
それから直ぐに自分が現実に戻って来た事を何度も確認する為、視線を彼方此方に向けた。

白い壁に、隅に置かれた木製のクローゼット。最近新調したばかりのタオルケットは手元に。




「ふぅ………」




大丈夫。此処は私の居場所。

静かに息を吐き、自分を落ち着かせる。


ふと気配を感じて隣を見れば、其処にはタオルケットに包まって、すうすうと寝息をたてる彼の姿。

今日も今日とて私の要望通り、耳栓を付けて眠っていた。

彼を起こしてしまわなかった事に、深く安堵する。


異常に聴覚が優れている彼でも、耳栓を付ければ常人と同様の聞こえ具合になるらしい。

私の音が彼の睡眠妨害にならないように、また耳栓ありでも普通に会話が出来るから。

双方同意の理由で、採用された習慣である。


彼曰く、いつも聞こえる音が無くなって負担は軽減されるものの、私の存在が感じられなくて少しばかり不安らしい。

だからか。どんなに暑くても、寝る時は彼に抱きしめられるか、そうでなければ必ず手を握られる。


不安らしいから仕方ないかと思う反面、どうも彼に乗せられた様な気がしてならない。←





「………」




冷や汗でぐっしょりのTシャツが貼り付いて、夏なのに寒い。

2度寝しようにも、先程の夢が脳裏をチラつく。

目を閉じると夢の光景が広がる。


妙に鮮明に覚えているのが嫌なところだ。



目を閉じられない為、仕方なく私は再び起き上がった。

震える足にムチを打ち、そろりと寝室を出る。




冷房の効いた寝室とは打って変わった、熱帯夜特有の暑くて重たい空気。

いつもなら顔を顰めるところだが、冷や汗びっしょりの今には、すごく有り難かった。


リビングから台所に入り、置いてあるコップを適当に取って蛇口を捻る。

コップ一杯に入った水を一気に飲み干して、リビングのソファに座った。


畳んでおいて仕舞い忘れた毛布を頭から被って、足を抱え込む。

この暑い中に毛布なんてジサツ行為だが、今の私には丁度良かった。


身体全体を覆うモフモフ。

私はそのまま、自分の膝に顔を伏せた。



全てから守られているような気がして。

心地よくて、安心したから。
 



このまま永遠に(ずっと)眠っていたい。

なーんて彼に云ったら、絶対怒られる。

また私を置いて行く気ですかって。



だから、云わないでおこう。


*→←*



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雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時

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