自由な君と。- 豪炎寺修也 - ep2 (ページ39)

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え、聞いてません。ページ39

「先生、次は決勝戦なんです。大事な試合を控えているんです、私ここでこんな事している場合じゃないんです」
「ああ、先生もそう思う。でもな、これはこれから先の未来の為に大事なこと何だ」

雷門さんに積み上げられた課題は全て終えた。終えたんだ。
見て、あのボロボロになった教科書にプリント。丁寧にマーカーまで引いてさあ、教科書にもプリントにも重要なものは全て記入したんだよ。終わったんだよ。

「あんまりですよ」
「先生もそう思う」
「決勝戦までもう日がないんです！本当に！」

だん！！と机を叩いて立ち上がれば、先生は深いため息をついた。

「あのな、今大会に出ている円堂達と違ってお前はマネージャーだ。スポーツ推薦で入学出来るわけでもない。じゃあ何が必要になる？」
「……内申点と出席日数です」
「で、A。お前は1年の3分の2は入院生活で消えてる。先生達もフォロー出来る限りはするけど、内申点と試験だけはどうしようも出来ないんだ」

大人しく椅子に座り直して、広げられた夥しい問題数を睨み付けた。
雷門さん、実は私の事嫌いでしょう。

「先生、雷門さんに練習に参加させないように言われてるんですか。それとも、家族から言われてるんですか」
「はあ……。何を迷走してるのか知らないけどな、今Aが叩き込まれる全ては中学生の基盤だ。Aはそれをしっかりと理解してきた、それが重要なんだ。これは、入院生活で失われた「時間」の埋め合わせじゃない、お前の「知識」の埋め合わせなんだ」

先生の言葉に不安げに視線を逸らして問題を解き進める。
知識の埋め合わせができたところで、時間も内申点もどうにもならない。
そんなこと、先生ならわかっているはずなのに。

それから、ただ黙々と問題を解き続けた。

最後の1枚解き、プリント用紙を捲れば裏面は空白だった。

終わった……？

「先生！終わったよー！」
「おお、よく今日中に終わったじゃないか。よかったな。豪炎寺、もう入ってきていいぞ」
「へ？」

先生に大喜びでプリントの束を渡せば、修也くんがそっと入ってきた。練習は？と思い時計を見れば、長い針は16時を指し示す。
ちょっと早いね。

「終わったみたいでよかった」
「うん、何とか終わった。修也くんは？練習終わるの早いね」
「合宿やることになったからな」
「え？明後日試合なのに？」

荷物を整理していれば、修也くんは近くまで寄って頷いた。

「え、私も？」

先生、もしかしてあの課題の山は。