自由な君と。- 豪炎寺修也 -

今日:12 hit、昨日:13 hit、合計:27,570 hit

お腹。ページ10

ㅤ
「Aちゃん、具合でも悪い？大丈夫？」

起き抜けにドアップで視界いっぱいに広がるお姉ちゃん。

「ううん、ちょっと起きれなかっただけだよ」

目を擦り、口元を拭う。それならいいんだけど…と制服姿のお姉ちゃんは心配そうに部屋の扉を閉めてくれる。
2人で階段を降りていると、お母さんが時間大丈夫なの？と不思議そうに見つめてきた。

「え…何時ですか」
「あ。お姉ちゃんもう行くね！変な人と猫さんには着いていかないでね」

ぽんっと、頭を軽く撫でてから急ぎ足でかけていく。
うん。私は遅刻です。

ゆっくりとご飯を食べていそいそと制服に着替えて。
いってきまーすと家を出る。

ほんのちょっと、急ぎ足で学校へ向かう。
桜の絨毯になった綺麗な道をるんるんと、進めば。

「とーちゃくっと」

まいったなー。門が閉まってる。
帰るとなるとお母さんを心配させてしまうし、かと言ってぐるりと回って行くのも違う。

ならば、答えはひとつ。

パーカーの袖をまくりよいしょ、と石垣に手を伸ばす。

「よっ」

塀を飛び越えた先、見えた。

白い後頭部。

「えっ」
「は……？」

どんっと音と共に塀の横にいた誰かを巻き込んで転倒した。

「いった～……ごめんなさい、大丈夫……です……」

見上げると目をぱちくりとさせた、よく、知っている人が居た。
雷門の制服を身につけて。

「修也……くん？」
「A……？」

「大丈夫ですか？今すごい音がして……って、大丈夫？」

駆け寄ってきた知らない女の人が私を起こしてくれる。
遅れて立ち上がる修也くん。

「……ふ、」

ふふ、ふ……と笑いを堪えても我慢出来なくて溢れてる修也くん。
私はただ、じっと。口を開けて笑いだした修也くんを見てた。

「お前……2回も、腹……っ腹に……体当たりっ……」
「～っわ、笑うなら思いっきり笑ってよ～！！」

ぽすん、と修也くんの肩を軽く押し退ける。

「ふっ……ははっ、」

知らない女の人がなんだか不思議そうに私と修也くんの顔を見比べては、閃いたように頷いた。

「2人は知り合いなのねー、よかった！それなら教室まで案内してあげて！職員室には放課後来てくれればいいから」

遅刻しないようにね、と校舎へ向かって駆け出したその人はどうやら先生の様だった。

「ふっ……くっ……」
「も～！いつまで笑ってるの」

涙うかべてますやん。どんだけ笑うん。
えい、とお腹をつつくと、悪い、と頭を優しく撫でられる。

「何組？案内するよ」

ㅤ