自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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え、ごめん。ページ43

「ごめん、今日寄るところあるから帰るね」
「Aのやつ、今日も部活来ないのか」

手を振り放課後の鐘が鳴りやむ前に校舎を飛び出した。
雷雷軒へ着いて徐に扉を開けばテーブル席の椅子へ深く腰をかけて新聞紙を広げてる響木さんが居た。

「あれっ鬼瓦さんは？」
「今日はまだ来てねえな」

ふーん。水ならそこから適当に出していいぞ、と顎先でさされた冷蔵庫。
シンクで手を洗ってから冷蔵庫からお水を出す。
勝手にコップを2つ用意して響木さんの分も水を入れると何も言わずに飲んだ。

「昨日雷門中の奴らが俺に監督になるように来たぞ」
「え？響木さんてサッカー出来るの？」

失言だったと言わんばかりに水をぐーっと飲み干す響木さん。
カウンターの椅子に座り、足をふらふらとさせていると突然扉が大きな音を立てて開いた。

「円堂くん？」
「A！お前も説得しに来てくれたのか？」
「え、ごめん。違う」

キラキラ輝いた瞳がしゅんと、しょんぼりしてしまった。
鬼瓦さん来ないなら私帰ろうか。そう思いコップを2つ持ちシンクへ持っていき洗っては水切りにおいて。

「響木さん、帰るね」
「おー」
「あと円堂くん結構しつこいから早めに折れた方がいいよ」

そう言うとえっ、というような素振りでこちらを見てきた2人。
なんだかその仕草が似ていて面白くて。

「1年かけて私をサッカーへ引っ張ったのそこにいるサッカーバカだからね」

じゃあねー！と手を振って扉を閉めて家へと急ぐ。
響木さんが監督になってくれるんだ。それなら、とても信頼できる人なんだろう。

まだ、監督になるとは言っていないかもしれないけど、なんだか響木さんが監督になってくれるのが当たり前のように感じて。

翌日。

円堂くんの3本勝利で響木さんは監督になってくれた。
修也くんの隣で満足そうに笑ってみせると、目が合った響木さんはやれやれという風に肩を下げた。

「修也くんが響木さんはどうかって提案してくれたんだってね」
「秘伝書のこと知っていたからな」
「そうだったんだ」

皆で気合を入れて、練習へ。
ジャージ姿に着替えて水筒とタオルの用意をしていると、響木さんに声をかけられた。

「マネージャーじゃないのか？」
「マネージャーだよ？」
「ジャージが選手用だろ」

よいしょ、と水筒が入った箱を持ち上げて、そうだよ。と簡単に答えた。眉間に皺を寄せた響木さんに私も釣られてしまう。

「円堂くんがこっち着てほしいんだって。マネージャーでもいいからって」