自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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新監督を探せ。ページ42

その後、皆で話し合って。検査結果としての異常は確かにない。けれど、著しく記憶能力に欠陥がみえて、私生活を送る上では支障はない。
ただ、どんな形でトラウマがフラッシュバックしてしまうかが未知数だった為に家族はサッカーそのものから私を切り離していた。

でも、約束を忘れないでサッカーへ引っ張った円堂くんが居た。
夕香ちゃんの目が覚めるまでは、と誓い、夕香ちゃんの為に今はサッカーへ向き合う修也くんが居る。

皆、互いに認めて高め合う最高の仲間だから。

そんな雷門の皆だから安心してサッカーへ送り出せることを、お姉ちゃんはゆっくりと丁寧に教えてくれた。

翌日は、お昼近くに目が覚めて恐る恐るリビングへ向かえが手紙があって。

「起きたら学校行くように……か」

顔を洗って、髪を整えて。制服を着る。
鏡に写る自分は、少し気だるげな表情で。

「よーし。今日も頑張るぞ」

玄関の扉を開けた瞬間に12時を知らせる鐘がなった。

雷門中へついて、慣れたように塀を超える。
靴箱まで歩いていけば昼休みの皆とすれ違った。

「重役出勤かよ」
「んー」

ベンチで並んで座っていた染岡くん半田くんに呼び止められる。

「新監督？」
「そ、冬海先生居なくなったからさー。今皆で探してんだ」

大変だね、と他人事に言葉を返していれば後ろから音無さんが抱きついてきた。

「おはようございます！Aさん！」
「おはよ」

躊躇いのない音無さんをヘリ剥がしてまた部活で、と手を軽く振る。
ようやく靴を履き替えて教室へ向かえば先生とすれ違った。

「A……今何時だと」
「お昼ですね」
「来年は受験なんだ、今から真面目にしないと」

そうですよね、うんうん。と先生のお説教に頭を下げて再び教室へ向かう。
扉を開けて入れば私の席に知らない男子生徒が集まっていた。
小さくため息をついて、失礼。と机の横に鞄をかければきょとんとした男子生徒と目が合った。

「え、今日席替えしたの？」
「してないけど」
「ならここが私の席で間違いないよね」

たぶん？そう答えられて軽く相槌をうち、追い払うのも面倒に感じて空いている修也くんの席に座らせてもらった。

机に突っ伏してひんやり冷たい机に目を閉じだ。

「起きろ」
「んい」

頭を撫でられて体を起こすと円堂くん達と一緒に戻ってきた修也くんが呆れたように立っていた。

「監督探し順調？」
「今のところは難航中だ」

席へ戻れ、と言われて自分の席を見るといつの間にか集団は居なかった。