自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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些細な時間。* ページ4

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季節は秋から冬へ。

検査も早く終わると思っていたのに、あれもこれも。予定を先へ先へと組み込んだ結果、気付けば鼻先がつんと冷える冬になっていた。

こんこん、と優しく音がしてどーぞと声を返せば。マフラーに埋もれたその人が居た。

「おかえりなさい」
「ん、」

ふるふると小刻みに震えてる。もう夕香ちゃんのところへは挨拶してきたあとだろう。
初めて妹、夕香ちゃんの話を聞いた時にはあまりにもの衝撃に、悲しさに泣いてしまって困らせた。

「……だからもうサッカーはやめたんだ」

この辺りだとサッカーの名門校は木戸川か帝国になる。
40年間無敗だと謳っている帝国はスポーツに疎い私でもわかるくらい、有名なのだ。
サッカーって、そんなに大変なの？辛いの？みんな、楽しくてやっているんじゃないの？

そう思った言葉は飲み込んだ。

揺れた瞳の奥に、灯ったままの力強さが、「やめた」なんて一言で整理できない大好きを物語っていたから。

夕香ちゃんのお見舞いのあとのほんの数十分。
勉強を教えてくれたり、夕香ちゃんの話をしてくれたり。
私のお姉ちゃんの話をしたり。

些細な時間が詰み重なっては、振り返れば学校の友達よりも話しやすい、親しい中になっているような気がした。

不思議と、距離が縮まったな、と思う瞬間はこの人が口数が減り出してからだった。

午後5時半。

こんこん、と小さく扉を叩いては一言、うん。だけを言うようになって。
紅茶よりも、珈琲よりも、意外とスポーツドリンクやお茶が好きな事。
でもたまに他のも飲んでみたり。

45分を指さす頃には、そろそろ帰る、と静かに手を振る姿とか。

少し、かなり。
互いを知るには十分な時間。

「はあーっ」

吐いた息が白くなる。空気が冷えきっていた。

「ひえ～っさっぶい」

窓から身を乗り出して、日が沈むのを眺めていれば突然扉がガラリと開く。

「Aちゃん！退院できるって！今先生からねっ」

ノックも無しに忙しなく声を朗らかにさせて、嬉しそうなお姉ちゃん。

「んーっ！やあっと学校かあ！」

腕を伸ばして背伸び。不意に早歩きで病院の門を通る姿を発見。
あの白い髪は。あの人だ。

「あら。豪炎寺先生の息子さんだよね」
「歩くの早いよね～」

くすくす笑うお姉ちゃん。
ほっと胸を撫で下ろしているのだろう、私の退院の知らせに。

1度だけ、聞いた事があった。

「ごーえんじ先生。私、何の検査してるんですか？」

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