自由な君と。- 豪炎寺修也 -

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猫みたいな君。side豪炎寺 * ページ1

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いつも通り、日課になったお見舞い。
手には夕香が好きそうな淡い桃色の花。

今日は、おはようと目を覚ましてくれるだろうか…。

重い足取りで病室に向かう。途中、すれ違う看護師さんも既に見慣れてしまい、少し眉を下げて微笑みを浮かべては会釈をする。

不意に、いつもは開かれて空気の入れ替えをされている病室が固く閉じられている違和感を覚え、足を軽く止めた。

瞬間。

がたりと大きな音がしたと思ったすぐ後に扉が大きく開いた。
視界に飛び出てきたのは、頭部。

ぶつかる。

1歩後ろへ下がる頃には、バチっとそいつと目が合った。
光を受けて眩いくらいにキラキラした緑色。まんまるい瞳の。

「ぎゃっ！？」
「っつ？！」

もつれ合った足にバランスを崩して倒れ込む。
尻餅をついた衝撃の後に遅れてやってきた腹部への圧力。

「〜っ」

腹の上に蹲り、痛みを堪えた声がもれ、しばらく身動きが取れなくなった。
なんだこいつは。なんなんだ。

「すみません！！」

病室から高校生くらいだろうか…大人びた女の人がぱたぱたと駆け寄る。

「妹がごめんなさい、お怪我はしてませんか？ほら、Aちゃん。起きて！」

腕を引かれて体を起こしたそいつと、しっかりと視線が重なる。
ぱちぱちと瞬きする度に長いまつ毛が揺れていた。

「わっごめんなさい！痛くなかったですか？！」
「ああ。そっちこそ大丈夫そうか？」

ズボンを叩き埃を払うと、大丈夫！と満面の笑顔を向けられた。
人懐っこそうな笑い方になんだか肩の力が抜ける気がする。

「ごめんなさい、この子入院するのが嫌だって聞かなくて…まさか部屋を飛び出すなんて思わなくて」

呆れたような姉に頬を膨らまして拗ねた表情をする妹。
すぐ退院できると言ってるのに聞かなくて…。ぽつぽつと不満の声を漏らす姉に、そいつは北方を向いて話を取り持つことを拒否していた。

思わず笑ってしまった、いじけた時の夕香みたいで。

「あ、いや。お姉さんと離れるなが嫌なんだなって思って。すまない」
「別にそれは平気ですよ？」

え。

「検査が嫌なの」

入院するのは妹の方だったようだ。
活発なその物腰に先入観が働いてしまった。

検査頑張ってください。すぐ退院できるよう、そう手を振り姉妹と別れる。

途中。

夕香への花を落としてしまったことに気付き振り向いた。
引き返して病室へ戻ると、俯いて先程の朗らかさが何も感じられない姉の後ろ姿。

何となく、病室の名前を見詰めた。

AA……。

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