検索窓
今日:17 hit、昨日:1 hit、合計:39,798 hit

第二十訓 ページ20

俺の存在に気づいた周りの人間は我関せずといった表情でサッと避ける。目を瞑ったまま鼻を伸ばして説明する山崎は周りがそんなことになっているなんて気づかない。


「その時沖田隊長が、「アンタは汚くなんかねぇ、綺麗でさァ!!あと好きだ!!」と告白して、Aちゃんはもうキュンキュンだよ!! で、愛を確認しあった二人は抱き合い、誓いのキスを…」
「山崎」


思ったよりも冷ややかな声が出た。山崎はびくっと肩を揺らすと、カタカタ震えながら振り返る。少々涙目になっていたが知ったこっちゃない。ニッコリと俺は微笑んだ。


「話が気になるなァ、続きはねぇのかィ?」
「あ…いや…あの、ちょっと盛ったというか…」


あはは、と乾いた笑い声をあげる山崎。数秒の沈黙が流れ、山崎の笑いも流されて消えていく。周りも「山崎やっちまったな」という哀れみの雰囲気が出来上がっていた。
俺はもう一度にこっと笑い、山崎が俺の気を伺うようにへらりと笑った瞬間、彼のモモをパーンした。肉がブルブルと震え、山崎は大きな悲鳴をあげて悶絶する。


「てめぇ注目されねぇからって法螺まで吹くようになったか」
「あ゛あ゛あ゛すみ゛ま゛せん隊長ぉ゛!!」
「あと何だィ、Aちゃんなんて呼んで。言っとくがアイツはてめーのこと認識してねぇからな」
「さらっとそういうこと言う!!傷つくからやめて!!」


ていうか、と涙目の山崎が絶叫する。


「隊長、めちゃくちゃ彼女のこと気にしてるじゃないですか!! もうそれ好きってことでしょ!?」


はた、と彼を蹴る足を思わず止めた。
好き、とは。俺がAに対して愛おしいだとか恋しいだとか、そんなチャラついた感情を持ち合わせているということか?
だが彼女のことを気にしてしまうのは確かで、ただ単に彼女の面倒を見るよう言われたから…という理由には収まらないことも何となく分かっていた。

視線が痛い。つつけば破裂しそうな雰囲気をまとった俺に皆触れられないでいる。土方さんまでもが遠くから俺を見ていた。
渇いた喉が水分を欲し、僅かな唾液を飲み込む。苦し紛れに出た言葉は俺をさらに独りにさせた。


「…もういい、飯食う気も失せた」


否定もせず、はぐらかしたのだ。こんなのほぼ肯定ととられても仕方ない。それは痛い程分かっていた。羞恥に顔が熱くなる。最後にもう一度山崎を蹴り飛ばして俺は走って食堂から逃げた。

嫌いでいて、と彼女は俺に望んだことを、忘れてはいないのに。どうしてこんなことになるんだ。

第二十一訓→←第十九訓



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (14 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽん酢ちゃん | 作成日時:2019年1月13日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。