第十四訓 ページ14
誰と喋ったって無駄なのだ。
私の言葉なんて皆聞こえていないし聞くつもりもない。私は所詮神と繋がるための過程でしかない。神様なんていないのに。
あの日はたしか、いつもみたいに誰かが来るのを部屋で待っていた。
知らない誰かが来て、
だけど違った。知らない男には違いなかったけど、彼等は正気を保っていた。
殺されるのかな、と思ったけど違った。私は運ばれた。多分ここが病院なんだろうなって思った。
その後、毎日誰かが来て私のことを聞いてきた。答えるつもりは無かった。
どうせこの人も一緒だもの。私の訴えなんて聞いてくれない。信者達がそうだった。いやなことをしている時に私のことを聞いてきて、やめてと言っても誰もやめてくれなかった。
男の子…沖田総悟と名乗っていた。総悟は私のことが嫌いみたいだった。私を嫌う人を見るのは初めてだ。しかも、話をちゃんと聞いてくれる私を嫌いな人。話を聞かないのに私を好きな人はたくさんいたけど、これは初めてだ。興味を持った。
病院を移転する時に彼は炎があがるなか私を助けてくれた。ますます彼がわからなくなった。嫌いなら見捨てちゃえばいいのになんで助けてくれたんだろう。
車の中で彼は姉の話をしていた。彼の姉はどんな人だったのだろう。
真選組について彼に姉のことを聞いてみた。彼の姉上様はつい最近亡くなったという。とても悲しそうな顔をしていて、いつもぶっきらぼうな顔ばかりしていたから慰めてあげようと思って、私は彼に言葉をあげた。
ただ、純粋な言葉をかけたのだ。
彼はひどく混乱して、私を突き飛ばした。
わけがわからなかった。悪意なんてないのに。
すごくショックだった。私は彼を慰めることさえできなかったのだ。
彼はすぐに私の真意に気付いて謝ってきたけど、よく顔も見れなかった。
やっぱり私はどこかおかしいのかもしれない。あの環境の中で私の価値観は普通の人とだいぶズレて、後戻り出来ないレベルにまで堕ちてしまったんだ。
総悟に合わせる顔がない。
私は隣の部屋にいる彼からの質問に答えられず、部屋の中でじっとしていた。
そもそも彼は私のことが嫌いだ。そのまま嫌って嫌って、興味さえ失ってくれれば、少し楽になれるきがした。
なのに、彼は女中さんに着物を貸してあげてと言ったり、美味しいご飯を持ってきてくれたりした。
あんなことをしてしまったのに優しくしてくれる彼が分からない。
34人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぽん酢ちゃん | 作成日時:2019年1月13日 19時