第十二訓 ページ12
真選組始まって以来の大捕物、過激宗教組織『
その幸艶教のトップである久遠氏の一人娘、久遠A。小さな部屋に幽閉されており、沖田隊長等によって保護された。その素性はトップの娘ということ以外一切不明…。情報は漏れていないはずなのに数々の襲撃がある。こちらも謎の多い人物だ。
そんな彼女は今、沖田隊長の隣の部屋に身を潜めていると聞くが…。
「何か進展はありましたか?」
「…あ?」
食堂で女中のおばちゃん達からカレーを貰うのを待っていると、珍しく目の下にクマを作った沖田隊長が隣に並ぶ。気になっていた久遠Aの話を聞くと、ガラの悪いヤンキーみたいに低い声を出した。
「どうもこうもしねェでさァ。あの女マジでうんともすんとも言わねー。山崎、お前変わってくれよお守り」
「その話聞いた上で変わりますなんて言うお人好し、ここにはいませんよ」
おばちゃんからカレーを貰う。先に席につくと、沖田隊長もうどんを持って向かいの席に座った。手を合わせてスプーンを手に取る。カレーを一口口に運んでから、「で?」と話の続きを促す。
「どんなことを話しかけてるんですか」
「そりゃあ…事件のこととか…組織でのお前の地位とか…」
「人をドMにして飼い慣らすのは引く程天才なのにこういうことはド下手クソなんですね沖田さん」
「山崎テメー喧嘩売ってんのか」
売ってないですよ、と水を口に含む。福神漬けを少し多めに載せて、口に入れる前にアドバイスをしてみる。
「きっと、抑圧された環境で心が死んじゃってるんです。聞きましたよ、あの子狭くて暗い部屋に閉じ込められてたって」
沖田隊長と変わらない年齢だと聞く。そんな女の子が世間に触れられず閉じ込められてたら心はすぐに冷たくなってしまうだろう。
「まずは心を開くべきです。トラウマ抱えたままトラウマのこと聞かれたら誰だって話せません。ここは一回、友達のように接するべきです」
「友達、ねィ…」
ずるるとうどんを大量に啜った沖田隊長は少し考えるように斜め上を見つめた後、颯爽と立ち上がった。人心掌握は上手い人だからなんとかなるとは思うが…うーん。
「大丈夫かな〜沖田隊長…」
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作者名:ぽん酢ちゃん | 作成日時:2019年1月13日 19時