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第六十九訓 ページ28

徐々にクリアになっていく頭と視界は違和感を訴える。彼女は今まで見えていたものが見えなくなっていることに気づいた。


(…よく、見える?)


ぱちぱちと瞬きしてみる。敵の姿がよく見えるのだ。アハ体験でもしているかのような感覚だ。なにかが変わったのだろうが、その何かがわからない。
眼球を上下左右に動かして隅々まで観察していると、突然天井からパラパラと塗装が落ちてきた。天井はさほど傷ついていない。しかし何故塗装が剥がれて落ちてきたのだろう。
分かりそうで分からない、もどかしい感覚に苛まれていると、思考を遮るように冷泉が笑った。


「賢いね桜雅崎くん。やっぱり君は地球に寄越した後、早々に処分するべきだったよ。私の教育の賜物だが、敵に回れば厄介な存在だ」


冷泉は天井を見上げる。塗装は各所でパラパラと落ち始めている。そして、何かが軋むような音もする。そろそろか、と彼は呟いた。その言葉を聞いてAも冷泉の思惑に気付いた。言葉にして伝えるよりも先に手が出た。神威のマントを引っ張って叫ぶ。


「神威!!」
「いきなさい」


その言葉で捜査官が二人の近くまで襲いかかる。捜査官達は皆覚悟を決めたような表情をしていて異様だった。捜査官達が二人の半径五メートル圏内に入った時、それは起きた。

床が崩壊したのだ。
Aが感じた違和感。それは柱の本数だ。
この建物は敵に侵入された際に目くらましや妨害その他戦闘面で使えるように柱がたくさん立っている。そして一本一本が太いため支柱としての役割も大きい。それを破壊させるのが冷泉の狙いだった。

結果、二人は柱に誘導させられて捜査官を倒しながら柱を破壊した。Aがよく見えると表現したのは、視界を遮っていた柱が破壊されて部屋の奥まで見えるようになったからだろう。Aが地球支部に配属になってから日が浅いためできた作戦だ。


落ちている瞬間、人が、瓦礫が、全てスローモーションに見えた。一つのフロアが壊れたら下も上も壊れていくジェンガと同じだ。更に上の階の床も抜けて落ちてくる。冷泉だけがあのフロアにいる。支柱が多かったため、二人の周りしか床が落ちなかったのだ。見下ろす冷泉の嘲笑が目に焼き付いた。

スローモーションの世界で、Aは神威に手を伸ばす。夜兎族の彼なら落ちてくる瓦礫を蹴って元のフロアの床が抜けてない部分に戻れることが出来るかもしれない。

──貴方だけでも生きて。

心の中で呟き、彼の背中を押そうとした時だった。

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設定タグ:銀魂 , 神威   
作品ジャンル:アニメ
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きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます! 原作での神威の発言から察するに、神威は異性を見る時まずどんな子を生むか考えるんだろうなと思いながら書きました。でも見た目にもうるさかったらいいなとも思いました笑 応援とても励みになります。精一杯頑張ります! (2018年9月8日 0時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - とつても面白いです。主人公の設定とかとても良いと思います。神威のセクハラプロポーズのところが新鮮で良かったと思います。更新待ってます。頑張ってください。 (2018年9月6日 23時) (レス) id: 34ad78a799 (このIDを非表示/違反報告)
きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - kamiyakazi725さん» お返事遅れてしまい申し訳ございません。応援していただきありがとうございます!なかなか時間がなく、更新もかなり遅めですが完走できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2018年8月14日 14時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)
kamiyakazi725 - とても面白かったです!更新楽しみにしています!神威&夢主ちゃん大好きです!神威かっこよすぎて鼻血g← 頑張って下さい!応援してます! (2018年7月23日 22時) (レス) id: 7058246684 (このIDを非表示/違反報告)
きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - 吾君トさん» 吾君トさんありがとうございます!更新遅くて申し訳ないです…。なんとか合間を縫って頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします!! (2018年6月15日 17時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きんぴらごぼうちゃん | 作成日時:2018年5月30日 18時

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