第五十六訓 ページ15
数日後、真っ白な部屋で真っ白な服に身を包んだ私は目を覚ました。ベッドのそばで冷泉が苦虫を噛み潰したような顔で私を見つめていた。何でそんな顔をするの、と掠れた声で問えば、君が死にそうになったから、と彼は悲しそうに呟いた。
「…Aさん、すまない。玖珂くんは…」
「言わなくてもいいわよ」
その顔を見ればどうなったなんてすぐ分かる。悲しいことを言わせたくなかった。
だけどどうやら喋りたい気分らしい。ぽつぽつとあの後どうなったか彼は話し始めた。
爆破テロを起こしたのは調査中だった海賊達。冷泉を初めとした班のメンバー達は彼らが二度目の爆発をさせようとしたところを確保。負傷者は出たものの、幸いにも死者は出なかったらしい。
一方、玖珂さんを殺した犯人はこの海賊の構成員ではなかった。地球のテロリスト、過激攘夷派の高杉晋助という人物らしい。彼が攘夷戦争時代率いていた鬼兵隊が最近復活したらしいが、その鬼兵隊はどうやら天人と手を組もうと考えている節があるそうだ。
「だから、彼らがここにいたのもきっと今回の事件を起こした海賊と手を組むべきか品定めをしていたんじゃないかって」
「…その流れで、玖珂さんは高杉と出会い殺されたと」
「そうなるね…」
重かった空気は余計重くなる。何より、冷泉がこんな顔をするのは初めてで、私が玖珂さんをもう少し早く見つけていればまた違った結末になっていたのかもしれないも思うとやるせない気持ちでいっぱいになった。
「…私のことをそうやって呼ぶの、久しぶりね」
「え?」
「Aさん、って」
「い、嫌だったかい」
「別に」
この人を仕事中でも親として見れば死ぬ。この人も、私も。だから私が仕事とプライベートを分けるために警部と呼び始めたのが始まりなのだ。
だから今日、彼が私のことを名前で呼ぶのは彼なりの配慮なのだろう。上司と部下ではなく、親子として話そう。そういう意味だろう。
「冷泉」
「何だい、Aさん」
「…私、強くなるから。もうこんな気持ちになりたくない」
「そうかい。私もこんな気持ちはもう御免だ」
「だから、冷泉。貴方は絶対死なないで」
「それは…はは、何故かな」
「貴方が死ぬ時は、私が、」
「A」
はっとして前を向く。銀時が怠そうな目で私を見つめていた。少し昔のことを思い出していた。それと、交わした約束のことも。今思うと、昔から冷泉は良い親であり上司だった。だからこそ私は今この現状に絶望している。
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きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - ねこさん» ありがとうございます! 原作での神威の発言から察するに、神威は異性を見る時まずどんな子を生むか考えるんだろうなと思いながら書きました。でも見た目にもうるさかったらいいなとも思いました笑 応援とても励みになります。精一杯頑張ります! (2018年9月8日 0時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)
ねこ - とつても面白いです。主人公の設定とかとても良いと思います。神威のセクハラプロポーズのところが新鮮で良かったと思います。更新待ってます。頑張ってください。 (2018年9月6日 23時) (レス) id: 34ad78a799 (このIDを非表示/違反報告)
きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - kamiyakazi725さん» お返事遅れてしまい申し訳ございません。応援していただきありがとうございます!なかなか時間がなく、更新もかなり遅めですが完走できるよう頑張りますので、これからもよろしくお願いします! (2018年8月14日 14時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)
kamiyakazi725 - とても面白かったです!更新楽しみにしています!神威&夢主ちゃん大好きです!神威かっこよすぎて鼻血g← 頑張って下さい!応援してます! (2018年7月23日 22時) (レス) id: 7058246684 (このIDを非表示/違反報告)
きんぴらごぼうちゃん(プロフ) - 吾君トさん» 吾君トさんありがとうございます!更新遅くて申し訳ないです…。なんとか合間を縫って頑張りますので、これからもこの作品をよろしくお願いします!! (2018年6月15日 17時) (レス) id: 6ee86a90be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きんぴらごぼうちゃん | 作成日時:2018年5月30日 18時