10.過去 ページ10
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最初出会ったのは、真冬の事だった。
定春と一緒に夜の道を散歩してた時の事。
「定春?どうしたアルか」
定春はいきなり立ち止まったかと思うと、何か匂いを嗅ぎながら暗い公園へと足を進めた。
「定春危ないアルよ 帰り道はこっちじゃ...」
公園のベンチの裏の茂み。
定春がその茂みを掻き分けてひと吠えする。
何か見つけたのかと私も近寄ってそこを覗き込んだ。
「...人 だ」
初めてAを見つけたのは、その茂みの中だった。
その時は周りが暗くて分からなかったけれど、Aはその時左腕に酷い怪我をしていた。
それのせいか気を失っていて、このままにしておく訳にはいけないとAを定春の背中に乗せて万事屋へと向かった。
真っ暗な帰り道。
幾つかの小さな街灯があるだけ。
定春の白い毛にはAの赤黒い血がダラダラと流れこびり付いていく。
苦しそうな呻き声が聞こえ、Aが目を覚ましたのかと思い立ち止まったその時だった。
「その御方を返して頂けませんか」
数メートル先。
黒い二つの影が私と定春を妨げた。
小さな街灯が二つの人物を照らし出す。
見覚えのある人物。
「警察風情が こんな時間に女探しアルか」
「あぁ ある意味な」
煙草を咥えている一人の男と監察の男。
その二人が私達を通さんばかりに睨んでいた。
「この女 お前らの知り合いアルか?」
何故か、定春が唸り始める。
渡してはいけないのだと言いたげに。
「早くしろ 公務執行妨害で逮捕するぞ」
「何も悪いことしてないのに逮捕される意味が分かんねぇヨ」
素直に渡そうとしない私に、目の前の男達は私に分からないよう話を始める。
その隙に逃げ出そうと定春の方を振り向いた時だった。
物音が間近で聞こえたかと思うと、すかさず私の首には刃物が当たっていた。
「おいやめろ!!」
その歯の根元へと視線を手繰り寄せる。
「なんだ てめぇかヨ」
そこには
私が一番大嫌いな黒服の男が私に剣を向けて立っていた。
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作者名:捺稀 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年12月7日 0時