25.涙 ページ25
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土方に伝えられた病院へと駆け込んだ。
走るなと他人に怒鳴られるが周りなど気にせず言われた病室へと入り込む。
「A!!」
病室の中には近藤さんと土方。
そして、
ベッドに横たわるAの姿。
幾つもの線に繋がれ、その瞳は閉じられていた。
心臓がバクバクと五月蝿い。
息切れが激しく、ふらつく足で近寄った。
「総悟 外は山崎に見張らせてある
何かあったらすぐ呼んでくれ」
近藤さんが俺の肩をポンと叩いて病室から去っていく。
土方も、いつの間にか後ろにいた旦那を連れてそこから出ていった。
ゆっくりと扉が閉められる。
遠のく足音。
静まる病室に、俺の息遣いと機械音だけが響く。
ベッドの傍に腰掛け、Aの頬を撫でた。
「...あったけぇ...」
じわりと目頭が熱くなる。
久しぶりにAの肌に触れた。
久しぶりにこんなに間近で見た。
自分の目から流れた涙がAの頬を伝い、俺の手の上を流れてゆく。
「...」
眠っているAを起こさないようにそっと離れ、俺は病室を出た。
「面と向かった再会は終わったのか」
病室の真横の壁に凭れている旦那。
苛立ちからか、横目で俺を睨む。
もう隠し通すのは無理だと思った。
「話 ...聞かせろよ」
死んだ魚の目をしていると周りから言われ続けていた旦那。
その目はいつになく真剣で、真っ直ぐで、
俺の体を強ばらせた。
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作者名:捺稀 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年12月7日 0時