19.頭の中 ページ19
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「その後 山崎さんに色々と調べていただきました
私が始末した男の言っていた事は本当で
私がただ馬鹿だっただけで
皆に迷惑を掛けていただけでした」
Aの口から長々と話されたその話はあまりにも酷く、苛立ちと憎悪の感情が押し寄せた。
深く呼吸をして握りしめていた拳を見えないように隠した。
「話は分かった
だが人を殺しておいて罪を逃れようとするのは間違ってんぞ」
「分かっています
ただ私はまだ 捕まるわけにはいかないのです」
真っ直ぐに俺を見つめるA。
少し胸がきゅっと締まった。
「あと少しだけ
少しの間だけ 私をそばに置いてください」
捕まる訳にいかない理由を聞こうとした。
けれどあまりにも真剣な表情に言葉が出なかった。
ただ言わなくても何が理由がかは分かる。
「好きにしろ」
その言葉以外出てこなかった。
眉を八の字に下げて笑うAに対し、俺は窓の外に顔を向ける。
頭の中がぐちゃぐちゃで整理できない。
どうすればいいのか考えながら、流れていく人混みを視点の合わない目で見つめる。
その中で一つだけ。
何故か立ち止まっている影を見つけた。
そこには立ち止まるような場所や待ち合わせ場所になるような所などないのに。
その影に視点を合わせる。
亜麻色の頭。
嫌という程見慣れた黒い制服。
沖田総悟が
こちらを睨むようにして佇んでいた。
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作者名:捺稀 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年12月7日 0時