14.慰め ページ14
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神楽が顔を覆って泣き出した。
その腕を掴んでいた手の力が抜けていく。
どうすればいいのか分からず、神楽の頭に手を置こうとした時だった。
ガラリと玄関の扉が開けられ、ドスドスと大きい足音が居間へと入ってきた。
「ワンッ」
白い大きな毛玉。
泣いていた神楽がそれに飛びついた。
「あれ まだ起きてらしたんですか」
その後ろからひょっこりと現れるA。
不思議そうに俺達二人を見ては小首を傾げている。
行き場のなくなった俺の手はじっとりと汗をかいていて、
軽く握りしめた拳をAの頭にコツンとぶつけそのまま寝室へと足を進めた。
襖を締め切り、敷かれている布団の上に倒れ込む。
襖の向こうではAが神楽にどうしたのかと聞いている声が微かに聞こえてくる。
どうすればいいのか分からない。
Aをこのままにしていていいのか。
何も解決せずに匿うような状態でいいのか。
考えることが多すぎる。
むしゃくしゃする頭を枕に擦り付けて一息吐く。
すると、寝室の襖がゆっくりと開けられた。
「坂田さん」
恐る恐ると俺の名前を呼ぶか細い声。
小さな足音が俺のそばに来ては止まった。
顔は伏せている為、何をしているかは分からなかったが
ふと俺の頭に手のようなものが置かれた。
俺の髪の毛をふわふわと撫でている。
「ごめんなさい 巻き込んで」
ボソリと聞こえた声。
悲しそうな、とても泣きそうな。
何を思っているのか、どうしてそんな泣きそうな声で謝るのか。
起きて慰めようとしたがやめた。
俺には出来ない。
何も分かろうとしない俺には。
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作者名:捺稀 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年12月7日 0時