この世界の片隅に【土方十四郎】 (ページ43)

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四十三ページ43

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言いたいこと言い切れば蔵場は意味が分かってないのか首を傾げている。それとは反対に後ろからは鼻で笑われる。

一発ぶん殴ったろうかと振り向けば十四郎ちゃんは優しい笑みを浮かべていたので、握りかけた拳を解いた。

「そういうこった。そんな大層なもんじゃねェ俺ァ、ただコイツの言った通り

惚れた女には幸せになってほしいだけだ。」

好きになった人が今幸せならそれでいいのよ

ミツバちゃんの声が聞こえた気がした。

十四郎ちゃんは立って蔵場を見据えていた。
そこにミツバちゃんが重なる。

＿＿私の周りには不器用だらけか。

＿＿まぁその分人を思いやってるって訳ね。

誰かの為にと思うばかりに遠回りしたり、空回りしたり。本当に不器用な人たちだと思った。

「こんなところで刀振り回してる俺にゃ無理な話だが、どっかでフツーの野郎と所帯持って、ガキ産んでフツーに生きてって欲しいだけだ」

この人の気持ちが全て分かったような気がした。コイツは犯罪者を捕まえにきたわけじゃない、

＂ミツバちゃんの幸せを守りにきた＂

それだけだったんだ。

やっと分かった気持ちに胸がいっぱいになる。ふぅ、と一息吐いて周りの浪士達を見やる。私一人で斬れる人数だと分かった。横目で彼を見れば、視線が交わる。私の考えはお見通しと言うように鼻で笑う。

「成る程、お侍様の考えることは私達下郎には計りかねますな」

『分かられたくもねーよ、クソ野郎。こっちもてめーらの考えてる事なんて分かりたくもねーしな』

「フッ、さっきから口の減らぬお嬢ちゃんだ。さぁそろそろ終わりにしようか」

『上等だ、コラ』

撃て

その言葉を合図に私は十四郎ちゃんを庇うように立ったが撃たれる前に目の前で大きな爆発が起きた。