三十二 ページ32
『旦那!!!!』
原田に言われて屯所の門まで走れば近藤さんが待っていて止められていたパトカーに乗り込む。乗り込んだのを確認した原田は車を走らせた。速度がどうのとか今は言ってる暇がない。車内はただならぬ雰囲気に飲まれる。みんなの顔色が悪くなっていく。病院に着けば原田に車を任せ目的の場所に一直線に走る。着物が乱れるがそんなの気にしてられない。
途中、廊下は走らない!なんて看護師さんに叫ばれたけど今はそんなに従う余裕はない。そこが良くない場所なのを物語るように人の数がどんどん減っていく。目の前に見えた銀髪の名を呼べば見たことない暗い顔。
「急に容体が悪化した。家族は…その…」
旦那は言いづらそうに口を噤んだ。その表情で私達は悟った。ガラスの向こうで先生や看護師が慌ただしく動いている。ミツバちゃんに繋がる機械が増えていく。涙が溢れそうになるのをグッと堪える。ガラスに張り付いてミツバちゃんを見つめる総悟くんの表情は見ていられなかった。隣に並べば中の様子がよく見える。手を伸ばしそっと彼の頭を撫でれば不安な顔がこちらに向く。
「A…」
『大丈夫、ミツバちゃんは強いんだから』
気休めにしかならない。そんなの分かっていた。けれどその言葉を言わずにはいられなかった。そっと彼から離れ旦那の座るソファの隣に行けば私と入れ替わりで総悟くんの隣に近藤さんが向かう。ただ隣に立って彼を見守る。それが見ていられなくて目を逸らした。
89人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時