二十五 ページ25
『ミツバちゃん、体調はどうなの?』
「まずまずってところかしら」
『…』
小さく笑うミツバちゃんは何かを隠しているのか少しだけ、その笑顔に影が見えた。見て見ぬ振りとやらも出来たのかもしれない。けれどそれが私には出来なかった。
『本当は違うんでしょ?』
「…ふふ、Aちゃんには隠せないか」
私自身がミツバちゃんを失うのが怖かったから、どうしても確認しておきたかった。けれど返ってきた言葉は期待していたものではなくて現実を見ろと言わんばかりだった。
「お医者様が言うにはね、あまり良くないんですって」
『辛いものの食べ過ぎだよ、きっと』
「かもしれないわねぇ…」
『なら少しは我慢しようよ。あ、はい、林檎』
「ふふ、Aちゃん。本当にウサギの形にするの上手いわね」
『あ…』
話を逸らすように林檎の入った器を渡せばそんなことを言われる。器の中を見れば紅い耳をつけた林檎が沢山。本当に無意識だった。赤くなりそうな頬を隠すように下を向けばミツバちゃんは楽しそうに笑う。
「私ね、Aちゃんの作るこのウサギの林檎好きなの」
そう言ってウサギの林檎にフォークを刺せばパクッと一口。美味しかったのか頬が一気に緩んだ。ミツバちゃんに勧められて私も一つ、口にする。思ってた以上の甘味が口内に広がって自然と私の頬も緩んだ。林檎食べたのっていつぶりなんだろうと。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年8月31日 0時