この世界の片隅に【土方十四郎】 (ページ13)

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十三ページ13

「俺らは間違ったことをしてる奴らを取り締まるのが仕事だ。…身内の縁者になる奴だとしてもだ。」

『土方さんなんでそんなに冷静なの』

「…」

私の言葉に一瞬だけ肩が震えた。冷静、なんて言葉かけちゃまずかったと気づいたのはそれからすぐだった。だけど出てしまった言葉を撤回できるわけもなく、ただ一言ごめんと謝る。でもそれへの返答は無く、沈黙が車内を支配する。十四郎ちゃんは何も言わずに煙草に火を付けた。そして続ける。

「…てめェらその面どうにかしとけ」

『うん…分かった…』

ザキちゃんも頷く帰るべき家である屯所が見えてきたがそれを通過し、商人たちが多く住む住宅地の方へ車を進めた。
行くべき場所は一つらしい。車の行く先を察したからか無意識に溜息が漏れた。それに返すように前の席から舌打ち。

十四郎ちゃんも複雑なのだろう、現に煙草の数が増えてる。
苛々してる、というよりはどうしようもない気持ちを何処へ吐き出そうか、何処へ逃がそうか。そういう葛藤の中で煙草に手を出しているのだろう。
何度か視界に入るサイドミラー越しに映る顔はいつにも増して険しかった。

暫くして車が速度を落とし始め、とある屋敷の前で止まる。明かりの先に見える銀髪には見覚えがあった。十四郎ちゃんが少し苛立ったのが分かる。顔を見るだけで苛立つなんてどんだけ短気なのかと彼の怒りの感情に疑問を持ちながら一緒にパトカーを降り、その銀髪に声をかける。

『旦那、ここで何してんですか』

「この屋敷は…」

私と十四郎ちゃんはその後言葉が続かなかった。いや、言葉が消えた、頭の中が真っ白になった気分だった。此処で出会ってしまうとは思いもしなかったから。

「と、十四郎さん…ゲホッゲホッ」

十四郎ちゃんの名前を呼んだミツバちゃんは酷い咳をした直後その場に倒れ込んだ。