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アルバイト
いつのまにか、Aはそんなものを始めていた
今日は、定食屋のバイト
と言っても、
腰を痛めたおばさんの代わりに
数日間だけのお手伝いだ
A「おはようございます」
扉を開けたAは、おじさんに挨拶をする
「おお、今日も頼むね」
仕込み途中のおじさんは視線を上げ
Aを見てにこりと笑った
A「よろしくお願いします!」
深くお辞儀をしたAを見て
うんうん、とうなずいてまた鍋に目を戻した
Aは慣れた手つきで掃除をし机を拭き
のれんを外に出す
と言っても今日は平日
まだお昼になる前のこの時間は
お客さんも少なくやることもない
「しまった、、」
不意に聞こえたその声に
Aは、ん?と声のする方を向く
「卵切らしてたの、すっかり忘れてた
Aちゃん、すまんが店番頼んでいいかい?
ちょいと買ってくるから」
A「え、や、私行きますよ!」
「いやいや、いいって
どうせこの時間はお客も来ねえ、
店番しててくれ」
おじさんは引き止めるAの声を無視して
外へ出て行く
一応ある程度の料理は教えてもらった
加えてAの料理スキルからすれば
店番くらいなんてことないが
それでもここの店主であるおじさんが不在だと
どうにも不安になる
A「お客さん、、来ませんように…」
そう言う願いをするときに限って
神様は意地悪だったりする
(ガラガラ
お店のドアが空き、1人お客さんが入る
A「い、いらっしゃい!」
Aは内心、空気読めよと舌打ちしたが
お客さんに罪はない
「おやじ、いつもの頼む
…って、なんだお前
おやじはいねえのか」
その人はタバコを加えながらお店に入ると
辺りを見回した
"いつもの"
そんなことを言うのは常連さんくらいだ
しかし、
入って数日のAはまだ会ったことがなかった
A「はじめまして
松浦Aと申します
おじさんは、今、買い物に、、」
「ったく、店開いてるときに買い物いくたぁ、
まぁいいや、あんた、
いつもの、ちょうだい」
その男の人はカウンターにドカッと座り
Aに注文する
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作者名:おぐら | 作成日時:2019年10月20日 7時