守り人の事情 [ティナリ] (ページ3)

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事情1 ページ3

レンジャー長のティナリの朝は早い

起きたばかりは少しだけ眠たげな顔をしているが、のろのろとベッドから起き上がり身支度をすれば、そこにはガンダルヴァー村の誰もが良く知るレンジャー長、ティナリの顔になる

彼はまず、その日すべきことを確認する

森の巡回と薬草の採取、薬の調合、患者の診察、発生した死域の枝の破壊など

レンジャー長としての仕事は多忙を極める

アビディアの森は広大だ

巡回も厳しく一日だけでは到底出来ないことは多い

そのため、彼はこんな朝早くに起きなければならない事態となっている

ガンダルヴァー村の住人は一体彼がいつ休息しているのか不思議に思っている程である

中にはこっそり彼を休ませようと画策しているようではあるが、それらはことごとく失敗に終わっているのはまた別の話である

彼が自慢の耳をぴん、と立てながら確認していると、遠くの方から微かに特徴的な鳴き声が彼の耳に届く

元より他の人よりも優れた聴覚を持つ彼は、鳴き声を辿りすぐさまその音の発生源へと近づく

家先の手摺(てすり)に特徴的な見た目のスメール特有の鳥、迷彩鳥が鳴いていた

その鳥の足には紙が結わえられており、所謂(いわゆる)伝書鳩だということは一目でわかった

「朝早くからご苦労様」

彼は鳥に労いの言葉をかけながら丁寧に紙を外す

鳥は人馴れしているためか、大人しく紙が外されるのを待っていた

彼は紙を外した後、内容を確認する

そこには新たな森の情報が丁寧に綴(つづ)られていた

丁度、ティナリが今日欲しかった情報でもある

…仕事が早いんだから

彼は若干その場に苦笑を溢しつつ、返事を書く

迷彩鳥は余程躾けられているのかその場から動こうとせず、何かを待っているようだった

「少しだけ待っていてくれ」

彼は鳥に声をかけると返事をするように鳴く

元々彼らは賢く、昔は人の言葉を理解する程賢かったらしい

…本当に今も受け継がれているかどうかは分からないところではあるが