1.事の始まり ページ1
『ここが、江戸……』
物珍しそうに町を眺める女が一人。
道行く着物の人々と、天人。
広く深い空を見上げれば、いくつかの大きな船。
ガヤガヤと楽しげな喋り声。
『随分、賑やかなところですねぇ』
薄く笑みを浮かべて一言。
これから始まる生活に胸を踊らせていると
「おいお嬢ちゃん」
と、少し濁った男の声。
「暇なら、俺たちといいことして遊ぼうぜェ?」
数名の悪漢らに声をかけられてしまった。
それでも女はヘラヘラと笑顔のまま
『あら、ごめんなさい……少し用があって、お相手はできないんです』
と。
そこで引き下がる生半可者でもなく、
「いいからこいよッ!!」
と、強引に腕を引かれてしまった。
『いいのですか?』
すると、先程までとは違うはっきりとした声で問うた。
「ああ?何が」
声は低く、脅かすように。
『わたし……足と足の間に、“あなた方と同じもの“が備えついていますが……』
____それでも、よろしいので?
「………は?!」
意味を理解し、一拍遅れて反応をする悪漢ら。
『あぁ……その反応では、私のお相手は難しそうですね』
『それではまた、なにかご縁があれば』
固まる悪漢らを横目に、穏やかな顔のまま先を行く女。
いや………男なのだろうか__?
悪漢らが見えなくなり、また賑やかな人混みの中に入り込んでいく。
ふと、愉快そうに一言ぽつり。
『あんな見え透いた嘘に化かされるとは……フフ、存外可愛いらしい……』
あやつらも誑された。この女の言葉によって。
『さて……この町に、面白い方はいるのでしょうか……』
「藍沢さんは誑すのがお上手」
____
さあ始まりました本作品!!
どうですか、ちょっと不思議な感じがする話になりましたかね?
主人公に関しては、そういう雰囲気の人を目指したいと思ってます〜!
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作者名:よらく | 作成日時:2021年9月7日 20時