Episode 9. ページ18
-Your Side -
「医師のAです。分かりますか?」
喜多見先生の、読み通りだった。
大規模な爆発を起こし崩壊した建物の中には、まだ何人もの人が取り残されていた。
今にも消えてしまいそうな命が、そこにあった。
ここにいる医師は、彼と私だけだというのに。
どうしようもない想いを抱えて、ただひたすらに処置を進める。
「少し体持ち上げますね!」
「A先生!大丈夫ッスか!?」
「私はいいから…徳丸くんはそこの方を!」
僅かに戸惑いと焦りを含んだ彼の返事。
ふと顔を上げると、瓦礫の向こうで懸命に患者に呼びかける喜多見先生の声。
そんな私たちとは裏腹に、だんだんと増えていく呻き声。
あの時と、同じだ。
これ以上思い出さないように、記憶の奥底に閉まっていた光景が蘇ってしまいそうになる。
自分の無力さに気が遠くなってしまったその時、
「何ぼーっとしてるんだ。」
背後から降りかかる聞き馴染みのある声。
とん、と肩に置かれた暖かい手は、無意識に名前を呼んだ彼のものだった。
「ねえ尚、なんで。」
「しっかりしろ。何があったのか知らないが、俺の知ってるAは、こんな現場に負ける医者じゃない。」
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なーお - 続きがとても楽しみです!頑張ってください! (4月13日 15時) (レス) id: 6f6733fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
Ria(プロフ) - きゃー 続きが楽しみ楽しみ (11月26日 9時) (レス) @page14 id: b18326fb22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mi | 作成日時:2023年11月15日 2時