【新旧双黒】誘惑だらけな同棲生活をどうぞ【短編集】

中島.料理by夜桜夢 ページ5

トントン、と包丁の音が部屋に響く。




「Aちゃん、次は何すれば善い？」


「あ、敦、人参ここに置いて」




隣で同じく料理をしている敦に人参を置いてもらう。

こうして一緒に夕飯をつくるのは習慣であった。




「ごめんね、僕まだ包丁うまく使えなくて………」


「善いの善いの、手伝ってくれるだけでも助かるから」




敦が料理をできないのは仕方がない。
今は一緒に作りながら教えてるという感じ。

お見本になるように手を丸めて人参を押さえ、包丁を当てる。

が、いつものように切る事ができない。




「あれ、この人参硬い………


痛っ！！」


「Aちゃん！？」




グッと力を込めると包丁の方向がずれて左手にかすった。


指先からじんわりと血が滲み出る。




「あーやっちゃった」


「Aちゃん、血が出て………！」




おたおたしだす敦。




「大丈夫だよ敦。このくらい平気」


「平気って………Aちゃん」




むうっと少し怒ったような表情をする敦。




敦は私の左手をとると＿＿＿




＿＿＿ぺろりと、舐めた。





「あっ敦！？」





ザラリとした生暖かい感触にと変な感覚が襲う。

舐められた、という事が私の顔を真っ赤にさせた。


敦は両手で私の左手をそっと包む。





「女の子なんだから………身体は大事にしなきゃ駄目だよ？」


「………………っ！！」




敦の真剣な表情と、女の子、という扱いに何とも云えない恥ずかしさを感じる。




「わ、判った、から」


「気を付けてね。僕もやってみる！」




ふにゃりと柔らかい笑みを浮かべる敦。

不思議にも心臓が五月蠅く鳴った。




無意識！？
これ、無意識なの！？




敦の天然小悪魔気質を感じた。





•.*•°•.*•°


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