42 ページ43
【16. I can't see the stars.】
本大会が始まる前の余興として、レオナ達サバナクロー寮の選手たちが戦っているのをAは観客席に座って観戦していた。あのあとAはリリアから咎めを受けた。
「Aよ、久しいの。」
相変わらず幼い見た目で何百年も前から変わらない。それを言えばおぬしもだろう、と返されてしまうのだが。
「ごめんなさいね、リリア。感情の制御の仕方がわからなくて」
仕方のないことじゃ、とリリアは言った。妖艶な色をした瞳が真っ直ぐとAを見据えた。
「お主、わしより随分と長く生きておるのについ最近まで迷子の赤子のようだったからの。でも、ようやく道導を見つけたようじゃな」
「ねえリリア、私はどうしたらいいのだと思う？」
黒曜石が不安げに揺れた。Aは両手を自身の腹の前で握ったり離したりを繰り返していた。レオナに対して間違いを選択してしまうのが途方もなく怖かったのだ。
「さあ、それはAが考えねばならぬな。案ずるでない。愛は偉大じゃ」
リリアは微笑んだ。その笑顔にAはなんだか無性に切なくなった。自分の魔法が成功したときに頭を撫でてくれた母はきっとこんな顔だったとAは思った。
「まあ、愛に関してはわしの方が先輩じゃからの。なにせ子供も育てたからな。一つアドバイスをしよう。ーー胸の内を全部言葉にして相手にぶつけることじゃ。案外言わなければ伝わらないことも多い」
「言葉にして、ぶつける」
そうじゃな、とリリアは頷いた。そうしてAの顔を見た後満足そうな笑みを浮かべ蝙蝠と共に飛び去った。
(ああ、どうすればいいの。お父様はお母様にいつもなんて言ってた？)
ハイエナの獣人ーー確かラギーだったかに耳打ちするレオナの姿が映った。独りよがりの笑顔なんかじゃなく、確かに自尊心のある笑顔だった。
(笑顔が好きだと言えばいいのかしら)
かと言ってレオナのたとえばすやすやと寝息をたてて眠る顔も、本が少し難しかったときの眉を寄せる顔も、全てがAにとっては愛おしいもの他ならない。
愛とはそれ自体で矛盾するものだとAは思った。愛すれば愛するほどに別れは辛いものとなり、愛は癒しである故に癒えることない傷を作る。それでも愛こそが人を完成させるものだと思った。ふわふわとあてもなく彷徨っていた自分の居場所がようやく見つけられたような気が、Aにはした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華陽(プロフ) - ハクグンさん» はじめまして、コメント本当にありがとうございます。自分の中での解釈違いと日々格闘しながら書いてきた話にコメント頂いて本当に嬉しいです。今後ともぜひご贔屓お願いします。ハクグン様のご期待に添えますよう日々精進いたします！ (2020年9月23日 15時) (
レス) id: a1497b6ee5 (このIDを非表示/違反報告)
ハクグン(プロフ) - あと作者さんほんと感謝しかないありがとうございます絶対に無理しない程度に更新頑張ってください楽しみにしてます (2020年9月23日 9時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
ハクグン(プロフ) - うわもうレオナさん好きすぎるほんと好き愛してる。星空の魔女様、どうか、どうか、レオナさんに気付かせてあげて。貴女の一番は彼でしょう？寂しがってる、勘違いしてる。だから、気付かせて。貴女は彼を愛している。 (2020年9月23日 9時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
定期テスト攻略ワーク。 - 六条さん» コメントありがとうございます！そんな感想を頂けて幸いです。先行きの見えない連載ではありますが、今後ともどうぞよろしくお願いします！ (2020年9月8日 22時) (レス) id: a1497b6ee5 (このIDを非表示/違反報告)
六条(プロフ) - コメント失礼いたします！温和で優しくどこかロマンチストさも持ち合わせた星空の魔女様と、そんな彼女に対して心を開いている様子のレオナくん。これから二人がどんな物語を紡いでいくのか、目が離せません！素敵なお話をありがとうございます(´；ヮ；｀) (2020年9月8日 21時) (レス) id: fcb5bad142 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華陽 | 作成日時：2020年9月6日 11時
