【ヒロアカ】幼馴染みが過保護過ぎてしんどい ８

３７３ ページ39

「下ろしな…！私は逃げ出すつもり何てないんだ」
「何と無く分かってる。母さんを守る為に鎖に繋がれてるんでしょ？けど、ババが此処に居ても母さんは救われないし、ババは何も守れない」
「知った風な事を…！！」
「知ってるよ。僕もアナタと同じだから」

ババにとって母さんがそうである様に、僕にも大切な人達が人質になっている。母さんと父さんの幸せを壊したくないのなら、大切なクラスメートを守りたいのならと、僕とババを檻へと繋ごうとする。

卑劣で姑息なクソジジイの悪質なやり口を僕は知っている。ババに一番近い立場の僕だけがその苦しみを理解する事が出来る。

「僕、雄英に入ったんだ。そこで大切な人達が出来たよ。だけど、ジジは大切な人達の夢を壊そうとする…僕が身を差し出せば皆は救われると分かっていたけど、僕はどちらも選ばなかった」

ババの様に諦めて檻に繋がれる事も、皆を売ってまで自由を手にする事も出来無かった。

「代わりに選んだ道は…僕の拙くて狭い世界で築き上げたもの全て投げ捨てて、諸悪の根源であるジジをこの手で殺す事だった」
「っ…お前」
「彼奴が居るから僕は自由になれないんだ。彼奴が居るから皆の夢が潰され、無関係の人達が実験の為に死んでいく。彼奴が居るから…母さんは僕と彼奴の板挟みになって踠き苦しんでる」

だったら、僕は逃げずに立ち向かうよ。この手でジジの息の根を止めるまで…止まれないから。

そう言葉を続けるとババは「お前は…今、何なんだ…？」と問い掛けてくる。

「……敵(ヴィラン)だよ」
「…そうか。随分お優しい敵(ヴィラン)が居たもんだね」
「言っておくけど、ババはついでだから」
「爺さんを殺すついでかい？」
「それもあるけど、僕が増殖で作ったクローンの子供がジジに捕まってるんだ。あの子を助け出すのが優先、ジジを殺すのはその後でも出来る」

話は終わり、もう暴れないでよ。とババを背負い直すとババは「…本当にお前に連れ出される日が来るなんてね」と感慨深く呟いた。

あの時の僕の戯れ言を覚えていたのかと驚くと同時に許された気になってしまう。ババにとって、僕の存在は忌むべきものだ。

だけど、そんな僕の言葉を信じていた訳じゃないだろうけど、頭の隅にでも残してくれていた事が純粋に嬉しいと思う。

３７４→←３７２

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す