【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ44)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:17,287 hit

【２３０】ページ44

ふぅ……と、心底面倒臭そうに煙草の煙を吐き出したキオさんは「さっき振りだな、イケメン君とAチャン？」と、口角を吊り上げながら持っていた煙草を地面に捨て、それを踏み付けた。

お父さんの懸念が当たってしまったと、そう理解するには充分過ぎる状況。キオさん達の狙いが私なら多勢に無勢の中、どう考えても私は焦凍君の足手纏いにしかならない。戦力にはなれないのかも知れないけれど、熱噴射や翼を動かして熱風くらいは浴びせられるかも知れないと、軽く焦凍君の肩をつつき「あの……」と、声を掛ける。

「心配すんな。もう二度とお前を奪わせたりはしねぇよ」
「そ、そうじゃなくて。足手纏いは嫌だから……その、個性でぶっ飛ばそうか……？」

そう控えめに提案すると、焦凍君はこの状況下でも吹き出してしまい「ま、真面目に言ってるのに笑わないでよ……」と、軽く焦凍君をﾎﾟｺﾎﾟｺと痛くない程度に叩いた。

「わりぃ。けど、お前は何もしなくて良い。ただ、そこで見ててくれ」

焦凍君はそのままﾀﾞﾝｯと地面を踏み付けると地を這わせる様に広範囲の氷結を繰り出し、戦闘に入る。キオさん達が咄嗟に飛び引くのを読んでいたかの様に続け様に炎を放つ様子を見ていた私は、場違いにも「……綺麗」と、呟いてしまう。

ｷﾗｷﾗと太陽の陽射しを受けて反射する氷と揺らめきながらも真っ直ぐと一直線に放たれる炎。その対極な筈のそれ等が共存する光景が戦闘中にも関わらず、心奪われる程に私には美しいものに見えていたのだ。

キオさんから放たれる砲弾が氷を砕き、そこへ更に大きな氷結を繰り出す焦凍君。数の有利を活かして回り込んで来る他の陽炎の人達を炎で牽制する中、焦凍君が一歩も動いていない……否、動けない状況を作り出している自分の存在に嫌気が差す。

私が此処に居るせいで焦凍君は前に出る事も、砲弾を避ける事も出来無い。向こうに数で負けている以上、私を守りながら戦うという事は焦凍君は常に全方位を警戒しなければならないという事で、先程から防戦一方だった。

派手に個性を使っているけれど、焦凍君が動けないと分かっているからか、キオさん達は遠距離からの攻撃や背後を取る様に回り込もうとする動きが素人目にも分かる。