【２１１】緑谷said ページ25
そう僕達の返事も聞かないまま飛び出して行った轟君にかっちゃんが「アホかテメェ！！」と、援護に入ってくれて、それに続く様に瀬呂君も轟君の援護に入り、僕と切島君と耳郎さんと上鳴君は敵(ヴィラン)を抑えに掛かる。
「おーおー……ぞろぞろと来やがったな。ヒーローの卵共。お前達に恨みはねぇが、うちのリーダー命令でな、お前達も駆除対象なんだわ」
煙草を咥えながら腕を大砲の様なものに変形させた男は口元に笑みを浮かべながら敵(ヴィラン)諸共僕達を狙っていて、その瞬間、轟君の怒りがそのまま形になった様な大氷結が倉庫の天井を優に貫き、陽炎の構成員を一網打尽にしていた。
「……無駄話に付き合う気はねぇよ。おい、Aは何処だ？」
左で温度を調整する事も頭から抜け落ちているのか、去年の体育祭で見た時と同じ様に腕に霜を纏わせたまま底冷えする様な目付きで煙草を咥えた男を睨む轟君に息を飲む。
「ﾁｯ……派手にやりやがって。そんなにあの子が大事か、よっ！」
そう氷漬けられた足下を撃った煙草の男に轟君が間髪入れずに炎を向けるので、それは流石にやり過ぎだと「加減して！！」と、叫ぶけれど、煙草の男は大砲の反動を利用して炎の軌道上から逃れていた。
「マジで厄介事招きやがって……オイ！お前等！撤収すんぞ！」
「まだ話は終わってねぇだろうが」
完全にスイッチが入ってしまっている轟君は狙いを煙草の男に定めると、地を這う氷結を繰り出す。だが、それを正面から大砲をぶっ放した男は「おーおー……怖い怖い」と、煽る様に薄ら笑いを浮かべる。
「Aチャンだったか。取り敢えず無事だから落ち着けよ、ヒーロー？って、そう言って落ち着く訳ねぇよなぁ」
「もう一度聞く。Aは何処だ」
轟君の目がヤバい。兎に角ヤバい。何がヤバいかなんて説明している場合じゃないけれど、物凄くヤバい。ガンギマリどころじゃない。かっちゃんを引き合いに出すのもどうかと自分でも思うけれど、それくらい今の轟君の目はヒーロー志望がして良い目付きでは無かったのだ。
とてもじゃないけれど、彼女にこんな轟君は見せられない。あのかっちゃんでさえ、此処まで頭に血が昇っている轟君に若干顔を引き攣らせているくらいだ。この場に彼女が居ようものなら、恐怖のあまり逃げ出してしまうのではないだろうか。
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作者名：パル | 作成日時：2022年4月2日 23時
