【ヒロアカ】20と1の一等星５ (ページ24)

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【２１０】緑谷said ページ24

―――状況は僕達が優勢だった。それだけ聞けば喜べただろうけれど、僕達が現在交戦中の相手は敵(ヴィラン)や陽炎では無く、この街のヒーローや警察であり、薬の影響で呂律も回っていない大人達の群れがただただ我武者羅に個性を放つ、そんな状況だった。

これがこの街の現状であると、まざまざと思い知らされる。分かっていたとは言え、こうして人々を守らなければならないヒーローや警察が敵(ヴィラン)を庇う盾になっているなど、酷いと言わざるを得無い惨状だった。

「何を……してるんだ！アナタ達は！！」

怒りで頭が可笑しくなりそうだと、その激情をぶつける様に今しがた殴って大人しくさせたヒーローを怒鳴り付ける。悔しくて、情けなくて、腑甲斐無い。そんな言葉達が零れそうになる中、飯田君が「今は抑えるんだ！」と、八百万さんが出してくれた縄で素早くヒーロー達を拘束していく。

「気持ちは分かるが、今は敵(ヴィラン)と陽炎が先では無いのか！？清水君の安否が分からない以上、そちらの情報を優先すべきだ！違うか！？」
「っ、ごめん。有難う……飯田君」

この街の件にAFOが関与しているとは思っていないけれど、それでも奴がこの状況を何処かで嘲笑っている様に思えて仕方が無い。社会を混沌の渦へと引き摺り込もうとしている悪の化身。それがこの状況を楽しんでいない筈は無いと、余計に苛立ちが募る。

「此処は俺達に任せて緑谷君達は陽炎の方を頼む！」
「分かった！行くよ、轟君！」
「ああ！」

切り替えろ、緑谷出久。今はAFOは関係無い。僕が今優先すべきは陽炎の確保と彼女の行方だ。そう気持ちを切り替える様に頬を両手で打った時、少し前を走る轟の顔が見えた。

どんな時でも冷静な彼が焦燥を顕にしている。当たり前だ。想い人である彼女が陽炎に攫われ、その居場所を知る陽炎が直ぐそこに居るのだから、冷静で居られる訳が無い。

取引場所である港の倉庫へと乗り込んだ時、既に敵(ヴィラン)と陽炎が交戦状態に入っていて、互いに一歩も引かずにﾄﾞｶﾄﾞｶと個性やら銃やらを撃ち合っていたのだ。

「っ、どっちから抑える！？」
「何舐めた事言ってんだ！両方に決まっとんだろうが！」
「俺が陽炎を纏めて凍らせる。その隙に敵(ヴィラン)の方を頼む」