【１３５】 ページ41
「い、今のは焦凍君が悪い……です」
「はあ？……って、お前……」
これ以上顔を覗き込まないでほしい。普段話す分には焦凍君の顔にもある程度は慣れたとは言え、流石にこの状況でのその顔は最早暴力だ。標準装備でその顔面偏差値なのは重々承知しているけれど、それを笑って流せる様な精神は持ち合わせてはいない。
「ち、近いから……」
「なぁ、一応確認するが……そりゃ気持ちわりぃって意味合いか？それとも照れてんのか？」
「なっ、は、恥ずかしいって事だよ……！言わせないで、ほしい……」
そのまま焦凍君と距離を取る様に両手を突き出しながら後ろに下がると、焦凍君は何を考えているのか、じーっと私に視線を向けると「なぁ、もう一回抱き締めて良いか？」と、とんでもない事を言い出す。
わんもあほーるど……？もう一回あれを、あの羞恥心に心臓を晒せと、焦凍君はそう言いたいのだろうか。
「む、むむ、無理っ！」
考えるまでも無い。そう逃げる様に屋上から飛び出した私は階段を猛ダッシュで下り、廊下を全力疾走し、何度も「むりむりむりむりむりむりーっ！」と、呟きながら靴箱で外履きに履き替える。
焦凍君の正気を疑ってしまう。いや、恐らく正気では無いのだろう。夏の暑さに頭が可笑しくなってしまったに違いない。そうだ、きっとそうに決まってる。そうでなきゃ可笑しい。
「……リカバリーガールに診てもらった方が良いと思う。可笑しい、絶対。きっと熱中症でも拗らせたんだよ、焦凍君」
「おい、人を勝手に病人扱いすんなよ」
「ぎゃあっ！？」
此処まで全力疾走した私が何だったのかと思ってしまう程、涼しい顔をして当たり前の様に平然と外履きに履き替え出した焦凍君。
「つ、ついて来ないで……！」
「帰る場所同じだろ。で、さっきの話だが……」
「無理だってば……！」
置き去りにする様に我先にと校舎を飛び出し、寮までこれまた全力疾走で帰った私は、それから暫く焦凍君に寮内でも追い掛け回される事になってしまったのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 110人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - 529zinbeizameさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います！楽しんで頂けて本当に嬉しく思います！ご期待に添えられる様に頑張りたいと思います！今後ともこの作品をよろしくお願い致します！ (2022年1月23日 21時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
529zinbeizame(プロフ) - めっちゃ面白くていっきみしてしまいました！！最高に面白いので更新よろしくお願いします！応援しています٩( 'ω' )و (2022年1月23日 13時) (レス) id: c26de05c7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2022年1月13日 20時
