【７９】 ページ33
「お、おとうさ……！おとうさん……っ」
泣きながらお父さんに手を伸ばす私に、お父さんは着ていたジャージの上着を背中に掛けてくれて「ほら、もう大丈夫だ」と、私の手を取って立ち上がらせてくれた。
「うっ、うぅ……ﾋｯｸｯ……っ」
「驚くのも無理は無いが、泣く程か……？」
「背中、穴開けてしまって……ご、ごめんなさい……っ。折角、買ってもらったパジャマ、ダメにしてしまって……」
鼻水が出そうになるのを必死に啜りながら言葉を紡ぐと、お父さんは「気にするな。それより身体は大丈夫か？」と、視線を合わせる様にその場に片膝を着く。
「せ、背中から、何か急に生えて……」
「それがお前の個性だ。これからそいつと付き合っていかなきゃならねぇもんだ」
「こんなの、要らない……っ」
怖かった。今でも自分にあんなものが生えてしまった事が怖くて、それで誰かを燃やしてしまったり、傷付けてしまうかも知れない事がもっと怖くて堪らない。ただの熱耐性もどきだったら良かったのにと、考えてしまう。
「いいか、A、よく聞け。個性ってのは、使い方次第で毒にも薬にもなる代物だ。お前が傷付けたくないと思うなら、その力を制御出来る様になれば良い」
「出来る様に……なる？」
「ああ。そこの緑谷も初めは酷いもんだったが、今は個性を使いこなせてる。大体、初めから上手く出来るもんなら、個性の特訓なんか必要無い」
そう言われてしまうと、確かにそうだと納得出来てしまう。未だにﾎﾞﾛﾎﾞﾛと泣き続ける私にお父さんは「もう泣くな」と、指で涙を拭い去ってくれる。
「お前達、本人はご覧の通りだ。客観的に見た清水の個性を纏めて報告頼めるか？」
「分かりました！」
勢い良く返事をした緑谷君は何やらﾌﾞﾂﾌﾞﾂと先程の私の個性についての考察をエンドレスに呟いていて、何処からとも無く取り出したノートに書き殴る姿に、お父さんは溜め息を吐き出し、軽く私の頭に手を乗せながら立ち上がる。
「今日はもう休め」
「はい、おやすみなさい……お父さん」
「ああ、おやすみ。お前達も夜更かしせずにさっさと寝ろ」
「この温度差よ！！」
そう吠えた瀬呂君を一睨みしたお父さんはそのまま寮を去って行き、私達もそれぞれの自室に戻り、眠りに着いたのだった。そして、私は夢を見る。
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パル(プロフ) - もぐさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!ひぇ……長編作ばかりなので大変だったと思いますが書き手冥利に尽きると言いますか、本当に嬉しく思います！有難う御座います！！ドロドロ鬱展開は今まで書いた事が無かったのですが書いてみたくなりました！今後ともよろしくお願いします！ (2021年12月18日 18時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - どの作品も性癖に刺さり一気に全作読ませて頂きました！やはり文章の綴り方がお上手なのか全くタイプの違った今作も最高です！いつかドロドロ鬱展開のバッドエンド作品も読んでみたいと思いました。これからも応援しております！ (2021年12月18日 16時) (レス) id: 1c01f7244c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パル | 作成日時：2021年12月11日 19時
