２１９ ページ32
『くっそ…！次だ！！もっかい勝負しろ！！』
『めんどくさい、だるい、眠い。おやすみ〜…』
『Aっ！！』
何かと突っ掛って来る勝己を負かして泣かして、地面に這いつくばらせる事は子供の時は至極簡単だった。気絶する勝己の隣で出久が来るまで眠って、出久に起こされて、勝己を担ぐ出久に『僕の睡眠を妨げる狼藉者だ…牢にぶち込んでおいてくたまえ』と冗談を言って、起きた勝己にまた勝負を吹っ掛けられる。
兎に角、昔から勝己は負けず嫌いでしつこい男だった。それでも、子供の頃は正直侮っていたんだ。勝己は僕に勝てないと、僕が勝己に負ける筈が無いと。
だけど、僕の奢りは中学に入った頃に打ち砕かれた。勝己の才能や戦闘センス、そして何より男女の力の差が露骨に現れたのだ。
力で抑え込まれ、初めて勝己が僕の優位に立とうとした時、僕は間髪に入れずに音を増幅して勝己の意識を狩り取る。そうしなければ、負けると本能が告げていたからだ。
その日から僕は勝己に対する侮りを捨てざるを得なかった。
『爆豪君、決勝戦進出っ！！』
思い出に浸る様に閉じていた瞼を開き、会場の外にも届くミッドナイトの勝己の勝利を告げる言葉に自然と笑みが零れる。
ポケットから栄養剤の丸薬を取り出して口の中でｶﾞﾘｯと砕く。
「…やっぱり、まだ味はしないか……」
轟との試合で派手に個性を使ったせいか、試合が終わった後に目眩が襲い、人気の少ない会場の外に逃げる様に避難した僕は勝己の試合よりも自身を休ませる事に集中していた。
万全の状態で勝たなきゃ意味が無い。勝己は全力で僕にぶつかって来るだろう。その全力に応えてこそ、心残りを消し去る事が出来る。
木陰から出て控え室へと向かうと、連戦になる選手の為か、少しのインターバルを挟んでいる最中だった様で、控え室の中には透ちゃん、百ちゃん、お茶子ちゃん、そして出久の姿があった。
「Aちゃん！も〜何処行ってたのー？」
「クールダウン…？」
「轟との試合凄かったもんね！！」
擬音だらけで大袈裟な身振りと手振りで兎に角凄かったと伝えてくれる透ちゃんに柄にも無く緊張していた僕は肩の力を抜き「有難う」と透ちゃんを抱き締める。
「うぇ！？ど、どうしたの！？」
「ううん。ただ、元気いっぱいの透ちゃんから元気を貰おうかなって思ってさ」
「Aちゃん、元気無いん？」
首を傾げるお茶子ちゃんに「こう見えて緊張してるんだ」と笑う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 112人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
パル(プロフ) - ウサギさん» ｺﾒﾝﾄ有難う御座います!!良い文なんてとんでもないです！1日で読んで下さったんですかΣ(・ω・ﾉ)ﾉ有難う御座います!!(><)これからもﾀﾞﾗﾀﾞﾗとした進行度ではありますが、どうぞよろしくお願いします!! (2018年6月1日 11時) (
レス) id: a050d7518b (このIDを非表示/違反報告)
ウサギ - 良い文ありがとうございます。 今日発見したが、すごくおもしろくて一日で全部読んでしまいました。 これからも頑張ってください。 (2018年6月1日 11時) (レス) id: 7b63bf87a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：パル | 作成日時：2018年5月22日 20時
