give me five！【男性声優】 (ページ9)

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ボイスサンプルの話　#木村side ページ9

『木村さん・・・ご相談があるのですが・・・』

村中から深刻な声で電話がかかってきたのは、ちょうどアフレコが1本終わったところだった。基本連絡はLINEのあいつが何事だろうか。

木村「どしたー？」

『マネージャーから男性声のサンプルボイスを録ってこいと言われまして』

木村「録ってこい・・・って。機材とかどうすんの？」

『それは事務所にあるやつを使っていいらしいです。それで、私まだ男声出すの慣れなくて、木村さんディレクションしていただけないでしょうか？！』

この村中Aというやつは。「ご飯おごってください」とかいうことは遠慮なく言ってくる癖に、本当に頼りたいときは躊躇うのだ。声震えてんじゃねぇか。

木村「いつ？」

『はい？』

木村「いつまでに提出するの？」

『明日です・・・』

木村「はぁっ！？お前、それいつ言われたの？」

『昨日です・・・』

ああ・・・またマネージャーの無茶振りか。これはこいつを責めても仕方ない。

木村「俺、今からソイラテ飲みに行く予定だったんだけど・・・ソイラテ奢ってくれる？」

『おご・・・奢ります！何でもします！』

木村「何でもします、はあかんやろ。1時間後に事務所な。ソイラテよろしく」

『し・・・承知！』

なんだその返事、と思いながら電話を切った。
マネージャーから言われたのが昨日ということは1日悩んだのだろう。その結果俺に頼ってくれたのが嬉しい。
事務所であいつと2人っきりか・・・・。

＊＊＊

事務所につくと村中は既に到着していて。事務所スタッフに聞きながら機材の準備をしていた。俺に気づくと、近くにあった紙袋を手に取り、慌ててこちらへ向かってくる。

『木村さん、お疲れ様です。これ、ソイラテです』

紙袋にはソイラテが入っているらしく、恭しく献上された。はいはい、とそれを受け取り、機材の邪魔にならないようテーブルの上に置く。

木村「セリフのサンプルあるの？」

『これです。マネージャーから送られてきて』

そう言って村中はスマホの画面を見せてくる。少年声と青年声両方用意しないといけないらしい。とりあえず、やりたいようにやってみろ、と村中をマイク前に立たせた。

『私のどこが変わったか、って？え？おまえ昨日と何か変わった・・・？あ！前髪！前髪切っただろ？え？違う？わっかんねーよ！女って本当面倒くせー』