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柿原「姫って本当に我慢強い子だよね」
『子役時代、お世話になった方から演技以外で仕事中は泣くな。泣いたら干されるぞ!って言われたんです。ほら、涙は女の武器ですし』
そう言って、村中は笑う。その笑顔がどことなく無理しているように見えて、
柿原「今日のことはあんま気にするな。姫の演技良かったし。だから……」
「だから、姫は今のままで大丈夫」そう言おうとしたところを、村中に遮られる。
『柿原さん!それは駄目です』
村中は褒められると駄目になる、と言われている。だけど、たまにはいいだろう。ここには俺と村中しかいない。誰かに見られる心配もない。
柿原「誰も見てないよ。大丈夫」
『そうじゃなくて……』
そこで村中は突然、ポタポタと涙を落とした。
柿原「え?!俺なんか変なこと言った?」
このタイミングで泣かれると思っていなかったので、慌ててしまう。村中はなぜか『違います違います』とだけ繰り返す。それから
『今日はちょっと心が弱ってたみたいです。なんか嬉しくて。すいません』
と途切れ途切れに話すと、涙で濡れた顔を上げた。その顔は……どう表現したらいいか……とにかくすごく嬉しそうに笑っていた。その姿を見て、「村中は叩かれて伸びる」ということは本当なのだろうかと疑問に思った。
遠回りをしてから村中を家まで送り届けたあと、俺はある人物に電話をかける。
柿原「お疲れー」
木村「かっきー?お疲れー。どした?」
柿原「あのさ、村中が叩かれて伸びるって話さ。あれ、本当なの?」
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作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時