同期の話 #梶原side ページ34
梶原「とりあえずビール?」
『うん』
梶原「あと適当でいい?」
『いいよ。ありがとう』
生中を2杯と軽くつまめるものを何品か頼む。
「フローリア」の収録終わり、約束通り僕たちは2人でご飯を食べに来ていた。
梶原「てか、本当にびっくりしたんだけど」
『何が?』
梶原「村中の声。あんな低い声出たんだね」
僕がそう言うと、村中は『自分でもびっくりしてる』と笑う。地声まで低くなっているような気がして聞くと、少しだけ困ったような顔になり
『ちょっと喉潰してる。昨日カラオケ行って』
と答えた。
梶原「そこまでしたの?!」
『まだ男声ってチューニングに時間かかるからさ、喉潰しちゃう方が手っ取り早いんだよね』
言いたいことはわかるけれど、それは喉に負担がかかりすぎるのではないだろうかと心配になる。しかし、この仕事が大好きな村中には言うだけ無駄だろう。「あんまり無茶すんなよ」とだけ言うと、一応は『ありがとう』という返事があった。
そこまで話したところでビールが来たので、ひとまず乾杯をする。ぐびぐびとグラスの半分ほどのビールを飲んだ村中は
『くぅ〜〜〜〜五臓六腑に染み渡る〜〜〜』
としみじみと言った。
梶原「おっさんか」
思わずツッコミを入れる。村中は『まだピチピチの20代だわ』とケラケラ笑う。
村中と飲むのは楽しい。食べるのも飲むのもペースが合うのか心地よいのだ。
お互いにいい具合に酔ってくると、村中はゆらゆらと左右に揺れ始める。お酒の力を借りて「本当村中は頑張ってるよ。声優に命かけてるってのがわかる」などとシラフでは恥ずかしくて言えないことも言ってみた。
『ちょっとやめてやめて。私は叩かれて伸びるタイプなんだから』
と村中は手をかざして、僕の言葉を遮る。
梶原「いいじゃん、同期なんだから」
『同期関係あるの?』
梶原「ないか(笑)」
『なにそれ(笑)でも、ありがと。そうやって言ってくれるのがっくんくらいだわ』
村中のことを、叩かれて伸びるタイプだと言ったのは誰なんだろうか。……褒められたらこんなに可愛い顔で笑うのに、と俺は頬杖をつきながら、村中の笑顔を眺めていた。
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作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時