「良平くん」の話 #木村side ページ31
木村「つーかさ、にゃかこ、前は俺のこと“良平くん”って呼んでなかったか?」
先日、達央から昔の村中のことを聞かれて思い出したのだが、子役だったときの村中は、俺のことを『良平くん』と呼んでいたような気がして、本人に聞いてみた。
『あー……そう……デス……ネ?』
と村中は半分カタコトで答える。
木村「何人だよ」
俺がツッコミを入れると
『まさか、覚えてると思ってなくて』
と、村中は苦笑いした。覚えてたわけではないけれど、この際そんなことは置いておこう。
木村「なんで変えたの?」
『え?』
木村「なんで“木村さん”に変えたの?」
村中との付き合いは、他の声優連中よりも断然長い訳だが、それなのに“木村さん”というのはちょっと距離がありすぎるのではないだろうか。俺としてはできれば“良平くん”に戻して欲しいし、それが無理ならせめて“良平さん”と呼んで欲しい。
村中は苦笑いしたまま
『休業から声優として復帰するってなったときに、いろいろアドバイスいただいたじゃないですか。あのとき沢木さんから木村さんを頼るように言われたんですけど、お話しするの久しぶりで“良平くん”って呼ぶのが少し照れてしまったのと、私も成人したのでちゃんとしないとな、と思って』
と答える。照れてしまった……ってなんだそれ。可愛いこと言ってんじゃねーよ。
木村「別に下の名前で呼んでくれてもいいんだけど」
『木村さんだって私のこと、苗字で呼ぶじゃないですか』
木村「名前で呼んでいいの?A」
俺が冗談で名前を呼ぶと、途端に村中は赤くなる。
『いや、ちょっと、それは……その……勘弁してください』
こちらまで恥ずかしくなるほどに、村中は照れまくる。その反応が可愛くて、タイミングを見てまたやろうと悪戯心が疼いた。
266人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時