ダミヘの話 #柿原side ページ27
スタジオの扉の細い窓から、村中の姿が見えた。緊張した様子で扉の前で深呼吸をしてから勢いよく扉を開ける。
『おはようございます。村中入ります。よろしくお願いします!』
柿原「姫ー」
ひらひらと手を振ると、俺の姿を見て村中は大きな声を出した。
『柿原さん!!おはようございます!』
知っている顔が見えて、少し緊張が抜けたのか、村中が笑顔になる。
スタッフ「柿原くんね、この後村中さんの収録があるって話したら残ってくれたんだよ?」
『え?!』
俺も村中と同じシチュエーションドラマのシリーズに出演するのだが、収録日もたまたま村中と同じ日になったのだ。俺の収録が終わったところで次が村中の収録であること、しかもそれが村中の初ダミヘであることを教えて貰った。次の仕事まで時間があったし、可愛い後輩を労ってやろうと思って待ってみたという訳だ。村中は驚いた顔で俺を見上げる。その顔が面白くて、俺はふふふ、と笑い声を漏らした。
柿原「姫の初ダミヘって聞いたから。どうせ緊張してんだろうなって思って、ちょっとからかっとこうかなーっと」
そう言って、村中の頰を両手で挟む。
『あひあほうほはいはふ(ありがとうございます)』
そのままふにふにしながら
柿原「てか散々こういうドラマCD聴いてきたんだろ。大丈夫だよ。自分がときめく男子になればいいだけ」
そう言ってウインクをした。
『柿原さんって本当に綺麗にウインクされますよね』
村中はぽやーっとしている。その表情が可愛い過ぎて、衝動的に手を出しそうになった。誤魔化すように、もう一度村中の頰を潰して
柿原「聞いてる?」
と迫ると、
『ひいてまふ(聞いてます)』
と情け無い声の返事があった。
柿原「変な顔」
そう言って笑ったあと、「可愛い」と付け加える。これくらいなら許されるだろう。村中はニコニコしながら
『収録頑張れそうです!』
と言った。こんだけ笑ってたら大丈夫だろ。そう思って、スタジオを出ようとすると、監督から
監督「柿原くんまだ時間ある?あるならちょっと村中さんディレクションしてあげてよ。ダミヘ得意でしょ」
と呼び止められた。知り合いに見られるのは逆に恥ずかしいんじゃないかと思い、村中にも声をかける。
『ディレクションしていただけると嬉しいです』
そんなちょっと申し訳なさそうな顔で微笑まれて、断れる訳ねーだろ。
柿原「しょーがねぇーなぁー」
俺は笑いながら、村中と一緒にブースに入った。
266人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時