報告の話 #梶原side ページ22
スマホが震えた。同期の村中Aから電話だ。電話なんて珍しいな、と思いながら、通話ボタンを押す。
梶原「もしもし?」
『もしもし、がっくん?お疲れ様。今、大丈夫?』
電話の向こうの村中の声はどこか弾んでいた。
梶原「大丈夫よ。電話とか珍しいじゃん。どうした?」
『オーディション受かった!』
梶原「おお。おめでとう?」
今までわざわざオーディションの合否を報告してきたことなどなかったので、少し戸惑う。
『「フローリア」の敵キャラ決まったよ』
梶原「マジか!」
僕は思わず声が大きくなる。「フローリア」とは僕が主役を務める冒険バトルアニメだ。
梶原「共演久しぶりじゃん」
『本当それ』
敵キャラだから、1〜2話だけの共演にはなるけれど、それでも嬉しかった。村中との共演は、まだ2人とも名前のある役がつかずにモブだったとき以来だ。
村中は、僕がこの「フローリア」の主役に決まったときにも連絡をくれて、笑いながら『悔しいー!』と言っていた。だけど、それと一緒に『同期の活躍は励みになる』と喜んでくれた。
梶原「誰役?」
『スピガ』
梶原「そっち?!」
スピガとは、確かに主人公が対峙する敵なのだが、性別は男。もう1人女性の敵とセットで出てくるので、てっきりそちらの役だと思ったので驚いた。
『最近、男性役もオーディション受けるようになったの。合格したのは今回が初めてだけど』
梶原「そうなんだ。頑張ってんじゃん」
『お?上から目線か?』
梶原「違うし」
村中は軽口を叩き、ケラケラと笑う。
『わかってるよ。ありがとう』
梶原「現場で会えるの楽しみにしてる」
『うん』
梶原「あ。その後、久しぶりにメシでも行こうよ」
そう誘うと間髪を入れず
『がっくんのおごり?』
と聞いてきた。
梶原「はぁ〜?」
『うそうそ。おごってくれなくても行く。久しぶりだしね』
別に僕のおごりでも、村中と飲みに行けるなら構いはしない。だけど、そんなこと言えるはずもない。
梶原「肉でいい?」
『肉がいいー』
梶原「(笑)店探しとくわ」
『よろしくね。じゃあまた。突然電話してごめん』
梶原「おお。連絡ありがとう」
『同期の活躍は励みになる』それは僕だって同じだ。また村中と同じ現場を踏めるというだけで、モチベーションが上がる。美味い肉が食べられる店、探しておかないと。
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作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時