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マネージャーの話 #沢木(マネージャー)side ページ14

沢木「男役で需要が上がるとはねぇ」

良平にディレクションして貰ったと言うサンプルボイスが良かったのか、ここのところAは、男性役のオーディションに呼んでもらえることが増えた。仕事があるのはいいことだが、私は内心複雑だ。
私の姉ーつまりAの母親は新進気鋭の舞台女優だった。順調に知名度を上げ、これからというときにAを身籠りあっさりと引退。そもそも姉を女優に、と強く希望したのは私たちの母親だったから、姉本人にそこまで未練などは無かったらしい。しかし、私自身は舞台に立つ姉のことが大好きだったし、憧れだった。だから、Aが子役として劇団ひまわりに所属したときには飛び上がって喜んだ。そのときからずっと、私はAのマネジメントをしている。
つまり、私はAを姉のような舞台女優にしたいのだ。しかし、A自身は現在声優業の方に重きを置いている。まぁ舞台の世界で過去にあったことを考えれば、戻るのには勇気がいるとは思うけれど。
わかっているのだ。だから、私はAに対して、強く「舞台女優になれ」とは言えないし、かと言って声優業を応援することもできない。結果、私はAに冷たく接することで、自分の気持ちのバランスを取っていた。
先程の私の言葉に、Aは助手席で曖昧な笑顔を浮かべる。私は溜息を一つ吐いて

沢木「じゃぁ私は別の現場があるから」

と路肩に駐車し、彼女を下ろした。

『はい、ありがとうございました』

Aは私に頭を下げて、ドアを閉める。これから、カラオケボックスで男声の練習らしい。まだまだ男声の出し方は慣れていない。それはもう体で覚えるしかないと、Aは空いた時間にこうして練習を繰り返している。その努力、少しでも舞台に向けてくれたら……なんて。わかっているはずなのに、私はまだ淡い期待を彼女に抱いている。

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設定タグ:男性声優 , 愛され   
作品ジャンル:タレント
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作者名:ちとせまる | 作成日時:2019年12月20日 17時

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