【wrwrd!】総統の女

ラズベリー ページ6

「グルさん、こっちです」

パタパタと尻尾が振れている気がする。
昨日編集をしていようが撮影をしていようがゆっくりを調教していようが、今日は甘味処にいきましょう、なんてLINEが入っただけでいく、と即答するから惚れた弱みは大きい。

ほいほい呼ばれた場所にいけば、変わらないフレアスカートを纏ってにっこり微笑むAがいて、少し安心する。絡まれたりしてなくてよかった。

「ここなんです、いつもは女性客だらけってとこは普段と変わらないんですけど、この時間帯なら男性客単体もいる事を突き止めまして」

ふふふ、と笑うこの子はどうして俺にここまでしてくれるんだろうか。甘味は好きだけど、1人で食べにはいかないからええのにな、なんて思う。一緒に行動できるから別に嫌なわけじゃないけど。
からんと柔らかい鐘の音に出迎えられて、笑顔の店員に案内されるがままに座る。注文はAに任せっきりなのはいつも通りだ。

「おー、今度オスマンともきてみっかな」
「気に入ったからで大丈夫ですよ、ここはですね、ご所望のパフェが有名なのですよ」

俺より10は低い身体が隣に並んでいるだけで少しだけ若くなったような気分に駆られる。

そう、高校の時のような初々しいこの感情は。

「ラズベリーは青春の味、ですって。
グルさんは青春ってありましたか？」
「ん？俺はなー...あんまり無かった、制服デートはしたけど」
「大先生は論外ですよ。

私もなんです、制服ってやっぱり特別感ありますよねー...」

大先生の女性遍歴は聞いてるだけで面白いから本当に人間の屑代表だとおもう。
制服、ねぇ。

「Aはあれなの？あのー...制服デートしてた頃に戻りたいん？」

「いえ、今が割と楽しいので」

ふにゃ、と表情を崩したAが運ばれてきたパフェの苺を掬った。
つられる様に同じ行動をとって齧ると、確かに甘酸っぱい味がする。

「今でも案外青春してるかも知れないな」
「食べてる間くらいならいいんじゃないですか」

この感情は、甘酸っぱいだけじゃないんだがな。

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