【wrwrd!】総統の女

社員旅行4 ページ23

荷物を置き、ほかのメンバーを待とうと共用のラウンジへ誘う。
ラウンジに居るから、とLINEで告げればすぐさま返ってくるもう居るん！？に適当に返しながら、Aに倣ってペットボトルを自販機から取り出す。
俺が払ってやろうかと問いかけても、それくらいならまた甘いもの食べに行きたいです！と言われたときには血液でも逆流するかと思った。
不意打ちでそんなことを言うからいつまで待っても焦がれてしまうことにAは気づかないらしい。
かしゅりと軽快な音を立てる刺激物はいくら建物内とはいえスーツでは暑いくらいの気分を涼やかにする。

「グルさんグルさん、グルさんっていつもスーツきてるか真っ黒かなイメージしかないんですけど、浴衣とか着るんですか？」

こてりと首を傾げるのに連れて動く髪は艶やかで、きっと着物でも似合うのだろう。

「私服は真っ黒なんやがなぁ...今日は用意されたヤツ着るつもりやけど」

ふむ、何とかして着物姿でも拝んでみたいものだ、今日用意されている様な浴衣ではなく、ちゃんとした着物姿を。

「グルさんなら何でも似合いそうですね」
「そんな事は無いだろう...が、そうやな、花火大会にでも行くか？実家にならまともなのくらいあるやろ」

え、と顔を上げるAに、心臓が止まる。
失策か、これは？流石に踏み込みすぎたか。

「いや、嫌ならええんや、なんなら我々の奴らと一緒でもいい」
「いえ！いきたいですね、楽しみです！
大人数の方が楽しいでしょうし、みなさんが来た時にでも提案してみましょう！」

ぱぁ、と晴れる表情に溜息をひとつ。
嬉しがってくれるのはいいが、焦りすぎたな。
我々メンバーを誘うなんてめんどくさい事をしてしまった、まあどうせ社畜達ばかりなのだから数人にはなるだろうが、その数人すら楽しげに俺を見てにたつく奴ばかりだ。

めんどくせぇな。

「お、グルちゃんや〜ん、Aちゃんも居る〜！」
「また負けた〜、ほら大先生これ持って」

トントンが持ち込んできたビニール袋はすでに酒が透けている。確かに何も無いとはいえすでに始める気か。

「グルさん、私ご飯の頃に戻ってきますね」

ふわ、と笑うAの指さす先の女性社員。
確かに俺達とべったりいる訳にも行かないだろう。
俺達はここにいる。

告げれば、はい！と去っていくAは、眩しい。

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