【wrwrd!】総統の女

会社 ページ2

惚れた女がいる。
1年前に俺の直属になった女だ。
ちょっと明るくて少し反抗気味。反骨精神と言っては言い過ぎだが、そこそこに噛みついてくる。
つまり、俺の好み直結で顔も許容範囲。
何処ぞの女関係ガバガバの奴とは違うが俺にだって女を落とすためのやり方、セオリーがある。

そして、それを使っても落ちないのがこいつ、Aだ。

「大丈夫か、お前...」
「大丈夫だと...思った時もありました。
グルさん...今日のお食事はキャンセルでも...?」

申し訳なさそうに手を合わせる様子も何度目だろうか。しょうがない奴だ。

「気にするな、別にそんな高い店じゃない。
それより分かんないのは何処だ」

上から被さる要領でデスクトップを覗き込む。
社員証が上手くAの肩にかかるも、赤面する様子もなく、えーっとですね、と続ける。いったいいつになれば意識の範疇に入れるんだか。

1度邪念を棄てて仕事モードで画面に意識を向け無ければ、あー、ここら辺はもう出来てんのね、むしろ何処で詰まるんだ。

ここです、と本人が指し示したところは基本のき、すらままなっていない。しかも他の操作でやっている奴なら飛ばして説明しそうなところだ。これは大先生、説明してないな。

「それは...前任が教えてなさそうだなぁ、分かった、明後日の昼時間と夜少し開けられるか？」
「大丈夫です、教えてくれるんですか！」

ぱ、と顔を耀かせて尻尾でも振りそうな様子でAは俺を見上げた。
近いのにバッチリ目が合うのが嬉しくもあり悲しくもあり。

「ええよ、どうせお前の前任の尻拭いだからな、慣れてる」
「だ、大先生にも色々お世話になりました...」

因みに前任は大先生、そして大先生が手をつけた女ではない、付けられていて堪るかと言った所だ。

「さて、そこんところも含めて、だ。

食いに行くか？」
「いきます！」

即答する辺り嫌われていないのだから、どうしてここまで意識されないのか。
疑問の日々は絶えなく続くのだ。

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