【ヒプマイ】左馬刻の彼女はゲーマー

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かつてこんなにヨコハマに帰りたくないと思ったことは果たしてあっただろうか




…イベント帰りにあったか。いやそうじゃない、意味が違う
あれは余韻に浸りたいって感じの帰りたくないであって、これは命の危機を感じている帰りたくないだ



あー…今からでもUターンしようかなぁ

向かいのホームでおいでおいでと軽快な音を奏でながら開く反対方向行きの電車


あぁ、私がもう少し頭弱かったら喜んで君に飛び込んでいったさ




Aの悲しい心の声は誰にも届かない
彼女にはこんなにも怒り狂ったヨコハマの犬からメッセージが届くというのに
何も悪いことしてないはずなのに、お友達と楽しく遊んでいただけなのに…





相手が一郎たちだというだけで後ろめたくなってしまうのは面倒くさい
めんどくさいなぁ…




少し人が減った電車内。あいた席に腰を下ろして後方にある窓の向こうを眺めた
時折すれ違う電車の中を見つめて、あぁ割と遅い時間なのだなぁっと感じる
…一郎の言葉に甘えておけばよかっただろうか



「…」





自分の思考回路にため息が出る
昼間の私はあんなにも左馬刻に会いたがっていたくせに、今はどうだろう


よーし、こんな時は


目を閉じたAは慣れた手つきで、彼氏の手よりも触ってきた
便利な端末に触れる
止まらない通知には一切触れずにスワイプタップを繰り返す



「ゲームするか」



無心でできるリズムゲーム…やっぱ可愛い９人のアイドルのリズムゲームだな
君に決めた


…追ってない間に４グループも出来ていたの驚きなんだが
取り合えず難易度はマスター一択だな
おっ推しのイベント今日からだったのか、協力マッチね。楽しいやつじゃん
なんて頭は既にゲームに切り替わる。そう、切り換えって大事


通知がうっとおしいので真顔でオフに設定する。
リズムゲームにおいてトーク通知が何よりも敵だと思うのだが皆さんいかがだろうか


ヨコハマについて、改札を抜ける。夜はやはり少し冷え込む
少しだけ肩を震わせて空を見上げた
さぁってどうしたもんかｎ



「よぉ」



あれれ〜、おかしいぞぉ
目の前に広がるのは、星が見えない真っ暗な空…じゃない




「今日の夜空は赤い月が二個も出ているんですね」



「俺の目ぇ見てそんなこと言うたぁ随分ロマンチストになったなぁ？」


しってる？赤い月って不吉なんだよ、そして二つあるんだよ
察して狂犬系彼氏


「おかえり、Aチャン？」

「…タダイマ、サマトキクン」

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